この恋、遊びにつき。
「お疲れ様」

閉店後、りえさんが声をかけてくれた。



「お疲れ様です。今日はすみませんでした」

「何かあった?」

「実は・・・インターネットで知り合った人がいるんですけど」

りえさんは少し驚いたような表情になったけど、すぐにいつもの笑顔に戻った。


「うん、それで?」

「今度電話しないか、って言われてて」

「そうなんだ」

「いい人だなとは思うけど、顔も知らないし抵抗あって」

「そうだよね」

「それで迷ってて」

「何を迷ってるの?電話するか、しないか?それとも関係を断ち切るかどうか?」

「電話するか、しないか・・・かな」

「迷うってことは、話したい気持ちもあるのね。きっと」

「・・・そうなんでしょうか?」

「あとはさゆ姉に相談してみたら?私は聞き役だからね。ま、言えるならだけど」



そういうとりえさんはお店の片付けへと戻っていった。

話したい気持ち、か。

ないわけじゃない。

どんな声をしてるのか、どんな話し方をするのか、気になるし知りたい。

それは興味本位だと思う。

そんなんで、話すのはよくないよね。

keiさんに失礼だよね。




「朋子ちゃん、もうあがっていいよ」

奥からさゆりさんの声が聞こえる。
りえさんがちらっとこっちを見た。


「お疲れ様です」

私がそういうと、「そういうことね」という顔をしてりえさんは微笑んだ。


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