この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 ブラックコーヒーの入ったカップを環は両手でギュッと握る。

「君のスマホ、通話録音機能は作動させているか?」

「え、録音……ですか?」

 高史郎がなぜそんなことを聞くのか、すぐにはピンとこない。

「あぁ。録音していれば、その彼女が君をあのホテルに呼び出した証拠になる」

「なるほど、たしかに。でも録音はしていません。プライベート用の電話でそんな必要はないと思っていたので。通話したという履歴は残っていますが」

 けれど、それだけでは証拠として弱いことは環にも理解できた。

 電話はしたけれど、そんな話はしていないと言われてしまえばそれまでだ。

 高史郎も同じことを考えたのだろう。悔しそうに唇を噛み、けれどすぐに穏やかな表情を取り戻して環にほほ笑みかける。

「とりあえず家まで送るから週末はゆっくり休め。なにかあればいつでも連絡してほしい」

 その言葉に弱々しくうなずくことしかできなかった。
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