恋人同盟〜モテる二人のこじらせ恋愛事情〜【書籍化】
次の日。
めぐは出社すると、すぐに更衣室に向かった。

最初の業務は旅行会社の取材の為、制服に着替える。
髪をアップでまとめてメイクを整えると、夕べもらったばかりのネックレスを着けた。
ちょうど鎖骨の真ん中に綺麗なブルーの花が咲く。

「うん、可愛い」

めぐはそっと手で触れて微笑むと、ロッカーを閉めて更衣室をあとにした。
事務所に行くと、まだ始業時間には早いせいか数人しか出社していない。

「おはようございます」

声をかけてデスクに着くと、環奈が顔を上げる。

「あ、雪村さん!おはようございます。昨日、私オフだったので渡せなくて。これお誕生日のプレゼントです。おめでとうございます」

そう言ってリボンのついた紙袋を差し出した。

「え、ありがとう!環奈ちゃん」
「いいえー。そんなに大したものじゃないですよ?アロマグッズと紅茶です」
「嬉しい!ありがとね。早速うちで使わせてもらうね」
「はい。って、あれ?もしかしてそのネックレスは、氷室さんからのプレゼントですか?」

目ざとく見つけて身を乗り出してくる環奈に、めぐはたじたじになる。

「えっと、そうなの」
「わあ、可愛いですね。それにさすがは氷室さん。雪村さんのことよく分かってます」

ん?と、めぐは首をひねる。

「それってどういう意味なの?」
「だって普通の男性なら雪村さんには、いかにも!な高級ブランドのジュエリーを贈ろうとすると思うんです。でも違うんですよね。雪村さんは見た目は一流美女だけど、中身はピュアな女子。ハイブランドの値が張るものなんて興味ないんです」
「そ、それは褒められてるのかしら?」
「もちろん。それに氷室さんも、どうだ?俺って彼女にこんな高い贈り物するんだぜ?なんてひけらかしたりしない。あー、いいですねお二人って。純愛って気がするなあ」
「それは、どうでしょう?」

後ろめたさに胸が痛んで、めぐは思わず視線をそらす。
その時「おはようございます」と弦が出社して来た。
めぐと同じように、広報用の制服を着ている。

「おはよう、氷室くん」
「おはよう。おっ、やっぱり合うな。そのネックレスと制服の色合い」
「うん、すごく素敵。なんか気分も上がるし」

すると環奈が、めぐと弦を交互に見ながらニヤリとする。
弦は不気味そうに顔をしかめた。

「環奈、何見てんの?」
「いいえー、ちょっと胸キュンのおすそ分けをいただいてまして。おはようございます、氷室さん」
「おはよう。ってか、何その妙な頷きは」
「これですか?うんうん、やっぱり氷室さんは分かってるーって意味です」
「ますます分からん」

めぐは苦笑いを浮かべつつ、弦を促してこのあとの取材の打ち合わせを始めた。
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