恋人同盟〜モテる二人のこじらせ恋愛事情〜【書籍化】
7月の半ばを過ぎたある日。
広報課の事務所に意外な人物が訪れる。
「失礼します。雪村さんはいらっしゃいますか?」
「長谷部さん!」
ジャケットを脱いだシャツとスラックス姿で、長谷部は事務所の入り口に立っていた。
めぐは席を立って歩み寄る。
「お疲れ様です、何かありましたか?」
「はい。ご協力いただいたドレスのカタログが出来上がったのでお渡しに。あと、こちらは広報課の皆さんへ。ホテルオリジナルのマドレーヌです」
「えっ、ありがとうございます!いただきます」
「それからランタンフェスティバル当日のお部屋ですが……」
「ああー、はい。えっと、あちらのミーティングルームでお話しさせてくださいね」
長谷部の言葉を遮って、めぐはそそくさと事務所を出る。
すぐ隣のミーティングルームに長谷部を案内し、二人で向かい合って座った。
「お忙しいところ、突然お邪魔してすみません。どうしても早く手渡したくて。とても綺麗な仕上がりなんですよ」
そう言って早速長谷部はめぐにドレスのカタログを差し出した。
A4サイズの上質なカラーのカタログは、表紙にめぐの純白のドレス姿が載っている。
「この写真が表紙なんですか?」
「ええ。デザイン会社にお任せしたのですが、恐らくこの写真が一番いいと判断されたんでしょう。私もそう思います」
「このウエディングドレス、とっても上品で素敵ですものね」
「確かにこのドレスはうちのコレクションの中でも最高級のものです。ですがその魅力を存分に伝えられたのは、雪村さんが着こなしてくれたからですよ」
「いえいえ、ヘアメイクさんとカメラマンさんのお力です。中も拝見していいですか?」
「もちろん、どうぞ」
めぐはそっとページをめくってみた。
3つのイメージに合わせて、プリンセス、ロイヤル、モードの順にドレスが紹介されている。
「わあ、可愛い!プリンセスラインのモデルさん、とってもキュートですね。ドレスもふんわりしていて本当にお姫様みたい。カラードレスもピンクやオレンジとか、優しい色合いですね」
自分が撮影したドレスしか知らなかっためぐは、他のドレスを見て目を輝かせた。
「スタイリッシュなモードラインも素敵。スレンダーとかマーメイドのドレスが多いですね。クールで大人っぽいです。カラードレスもワンショルダーとか、斬新ですね」
すると黙って聞いていた長谷部がふっと笑みをもらす。
「雪村さん、どうしてご自分のページを飛ばすんですか?」
「え、それは……。恥ずかしくて直視出来ないからです」
「そんな。こんなにお綺麗なのに?見てください」
そう言ってページをめくろうとする。
「わー!いえ、結構です。あの、あとで拝見しますので」
「そうですか?分かりました。ぜひ感想をお聞かせくださいね。それから8月10日のお部屋なんですが」
「あ、はい!押さえていただいて、本当にありがとうございました」
めぐは背筋を伸ばしてお礼を言う。
「いいえ、お役に立てて良かったです。ちょうどキャナルガーデンが正面に見えるツインルームを押さえました。もしダブルをご希望でしたら、今後もキャンセルをチェックして変更しますがいかがでしょう?」
「そのままで大丈夫です、ありがとうございます。それで支払いは私に請求が来るようにしていただきたいのですけど、可能でしょうか?」
「え、はい。それは大丈夫ですが……。雪村さんがチェックアウトの手続きをされないということですか?」
「ええ。私は泊まらずに帰って、もう一人の友人だけ泊まってもらおうと思っています。ただ場合によっては、その友人も泊まらないかもしれません」
長谷部は少し首をひねって考えあぐねている。
「かしこまりました。ちょっと理解が追いつかないのですが、とにかく請求は雪村さん宛にとフロントで共有しておきますね」
「お手数おかけして申し訳ありません」
「とんでもない。ご利用を心よりお待ちしております」
支配人の顔になり、うやうやしく頭を下げる長谷部に、めぐもふふっと笑ってお辞儀する。
「はい、楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします」
「当日晴れて、綺麗なランタンフェスティバルが見られるといいですね」
「そうですよね。てるてる坊主作ってお願いしておきます」
「いいですね。私も作ろうかな」
二人で微笑み合って頷いた。
広報課の事務所に意外な人物が訪れる。
「失礼します。雪村さんはいらっしゃいますか?」
「長谷部さん!」
ジャケットを脱いだシャツとスラックス姿で、長谷部は事務所の入り口に立っていた。
めぐは席を立って歩み寄る。
「お疲れ様です、何かありましたか?」
「はい。ご協力いただいたドレスのカタログが出来上がったのでお渡しに。あと、こちらは広報課の皆さんへ。ホテルオリジナルのマドレーヌです」
「えっ、ありがとうございます!いただきます」
「それからランタンフェスティバル当日のお部屋ですが……」
「ああー、はい。えっと、あちらのミーティングルームでお話しさせてくださいね」
長谷部の言葉を遮って、めぐはそそくさと事務所を出る。
すぐ隣のミーティングルームに長谷部を案内し、二人で向かい合って座った。
「お忙しいところ、突然お邪魔してすみません。どうしても早く手渡したくて。とても綺麗な仕上がりなんですよ」
そう言って早速長谷部はめぐにドレスのカタログを差し出した。
A4サイズの上質なカラーのカタログは、表紙にめぐの純白のドレス姿が載っている。
「この写真が表紙なんですか?」
「ええ。デザイン会社にお任せしたのですが、恐らくこの写真が一番いいと判断されたんでしょう。私もそう思います」
「このウエディングドレス、とっても上品で素敵ですものね」
「確かにこのドレスはうちのコレクションの中でも最高級のものです。ですがその魅力を存分に伝えられたのは、雪村さんが着こなしてくれたからですよ」
「いえいえ、ヘアメイクさんとカメラマンさんのお力です。中も拝見していいですか?」
「もちろん、どうぞ」
めぐはそっとページをめくってみた。
3つのイメージに合わせて、プリンセス、ロイヤル、モードの順にドレスが紹介されている。
「わあ、可愛い!プリンセスラインのモデルさん、とってもキュートですね。ドレスもふんわりしていて本当にお姫様みたい。カラードレスもピンクやオレンジとか、優しい色合いですね」
自分が撮影したドレスしか知らなかっためぐは、他のドレスを見て目を輝かせた。
「スタイリッシュなモードラインも素敵。スレンダーとかマーメイドのドレスが多いですね。クールで大人っぽいです。カラードレスもワンショルダーとか、斬新ですね」
すると黙って聞いていた長谷部がふっと笑みをもらす。
「雪村さん、どうしてご自分のページを飛ばすんですか?」
「え、それは……。恥ずかしくて直視出来ないからです」
「そんな。こんなにお綺麗なのに?見てください」
そう言ってページをめくろうとする。
「わー!いえ、結構です。あの、あとで拝見しますので」
「そうですか?分かりました。ぜひ感想をお聞かせくださいね。それから8月10日のお部屋なんですが」
「あ、はい!押さえていただいて、本当にありがとうございました」
めぐは背筋を伸ばしてお礼を言う。
「いいえ、お役に立てて良かったです。ちょうどキャナルガーデンが正面に見えるツインルームを押さえました。もしダブルをご希望でしたら、今後もキャンセルをチェックして変更しますがいかがでしょう?」
「そのままで大丈夫です、ありがとうございます。それで支払いは私に請求が来るようにしていただきたいのですけど、可能でしょうか?」
「え、はい。それは大丈夫ですが……。雪村さんがチェックアウトの手続きをされないということですか?」
「ええ。私は泊まらずに帰って、もう一人の友人だけ泊まってもらおうと思っています。ただ場合によっては、その友人も泊まらないかもしれません」
長谷部は少し首をひねって考えあぐねている。
「かしこまりました。ちょっと理解が追いつかないのですが、とにかく請求は雪村さん宛にとフロントで共有しておきますね」
「お手数おかけして申し訳ありません」
「とんでもない。ご利用を心よりお待ちしております」
支配人の顔になり、うやうやしく頭を下げる長谷部に、めぐもふふっと笑ってお辞儀する。
「はい、楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします」
「当日晴れて、綺麗なランタンフェスティバルが見られるといいですね」
「そうですよね。てるてる坊主作ってお願いしておきます」
「いいですね。私も作ろうかな」
二人で微笑み合って頷いた。