野いちご源氏物語 一〇 賢木(さかき)
 参内(さんだい)すると、源氏(げんじ)(きみ)はまず(あに)(みかど)にご挨拶(あいさつ)なさった。帝はちょうどのんびりなさっていたときで、兄弟でいろいろなことをお話しになる。
 帝は亡き桐壺(きりつぼ)(いん)によく似ていらっしゃる。もう少し優美(ゆうび)で、威厳(いげん)というよりは優しさがおありになる。
 朧月夜(おぼろづきよ)尚侍(ないしのかみ)と源氏の君のご関係は、帝もご存じだった。
女官(にょかん)として内裏(だいり)で働きはじめる前からの関係なのだから仕方がない。お似合いのふたりだ>
 と(あきら)めて、あえて()()くようなことはなさらない。

 真面目(まじめ)な学問のことも、個人的な恋愛のことも話題になった。
伊勢(いせ)神宮(じんぐう)斎宮(さいぐう)になった、六条(ろくじょう)御息所(みやすんどころ)姫宮(ひめみや)は美しかった。出発の儀式(ぎしき)(くし)()したときのことが忘れられない」
 帝が内緒(ないしょ)(ばなし)をなさったので、源氏の君も御息所との別れをすっかり打ち明けてしまわれた。
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