鉄仮面の自衛官ドクターは男嫌いの契約妻にだけ激甘になる【自衛官シリーズ】
トラウマと向き合う日
「大丈夫ですか?」

 勤め先から帰宅する途中、道端にうずくまる女性を発見して声をかけた。

 胸を押さえ、荒い呼吸を繰り返すその顔は、頼りない街灯の明かりでもはっきりとわかるほど青白い。年齢は五十代後半、それよりもう少し上だろうか。私の父や母と同じくらいに見える。

 咄嗟に駆け寄った私を見上げる余裕さえないのか、女性は縮こまって首を左右に振った。

「胸が、苦しくて……」

「ゆっくり深く息を吸ってくださいね。吸って……吐いて……。焦らず、呼吸に集中してください。すぐに救急車を呼びますから、もう大丈夫ですよ」

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