きみの本気は分かりづらい
「ゆ、ゆう兄…」

「ごめん。とっさだったから
抱き締めちゃった」

「そんなのいい。早く乾かさなきゃ…」

「あー、大丈夫大丈夫
むくちゃんが濡れちゃうから」



動揺しながらも
スカートのポケットから取り出したハンカチで
ゆう兄の顔を拭こうとしたけど

ゆう兄は
片手で制して、それを拒む



「で、でも…」

「ほら、予鈴鳴った
むくちゃん、先に教室戻んな」



びしょ濡れになったシャツを脱いで
それを、ぎゅっと両手で絞りながら
チャイムに気付いたゆう兄は、私に言う



「……でも…」

「俺も戻って、着替えるから」

「…」

「ね?」

「……うん」



言い聞かせるように、私に言葉を向けるゆう兄


後ろ髪を引かれながらも
言われた通り、私はその場を後にする


そんな私を、ゆう兄は笑顔で
のんきに手を振りながら、見送った
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