世界はそれを愛と呼ぶ

第3節 無知は甘えだと

☪︎


『─続いてのニュースです』

無意味につけたテレビから、ニュースが流れる。

『……この地域は朝の時点では、晴れの予報でしたが』

突然の、天気の大荒れ。
それに戸惑う人々は、仕事の帰りを心配していた。

『また、この雨で交通規制をはじめ、土砂崩れなどの……』

そこで、テレビを消す。

「……あの子達か」

男はリモコンを置くと、そばにある刀に触れて。
徐に、重い腰を上げた。

久しぶりに窓から見上げる空は、曇天で。
このままなにも知らないフリ、見なかったフリができれば、自分は解放されるかも。……なんて、そんなことをした未来が、バッドエンドであることはよく知っている。

自分の無知が、愚かさが、甘えが、亡き妻をもっと追い詰め、苦しむ子どもたちを産んでしまった。

逃げ出した自分を強制的に連れ戻すことも出来るだろうに、それをしなかった両親や兄達は今、あの家で。

「─……相志」

小さく呟けば、そばに花びらが集い、彼が現れる。
朝霧相志。現在、唯一の直系たる朝霧家の当主。

最愛を亡くし、結婚はしないことを公言している彼で終わる朝霧家。
四季の家全ての能力を思うままにする、特別な一家。

「希雨を助けてくれないか」

「……それは、お願い?それとも、命令?」

「”お願い”」

春馬がそう言えば、相志は微笑んで頷いた。

「勿論。─その前に、【掃除】しなくちゃいけないよね。御園家を出てからずっと、あの家に害をなしそうな奴らは消してきたけど……ここまできて、こんな大物が、ね。手始めに、複数の業界へ根回ししてくるね」

心強い、兄のような幼なじみ。
妻と彼と春馬、幼い頃はこの3人で過ごす時間がいちばん長くて、多くて、あの頃は何も知らなくて。

無知だったから、春馬は多くのものを傷つけて壊した。

『はるくんっ、置いていかないでっ』

そうやって泣き叫んだ妻に背を向けたあの日を、今も忘れない。
家を出てからわりとすぐ、彼女が死んだ日も。
泣けなかった自分に、春馬は耐えられなかった。


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