取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 交流をしたいと言われていたハワイの神社に、新婚旅行を兼ねて一緒に行くことになったのだ。日程の調整をしていたら八月になってしまったのだが、そのぶん、ハワイの観光情報をしっかり調べることができた。
 連絡役は英語の得意な優維が担った。

「千景くんが神職を続けることができて良かった」
「優維さんのおかげだよ」
 千景はそっと手を伸ばして優維の手を握る。

 聖七や勇雄たちが掴まったあと、再度の総代会が開かれた。
 優維も参加したそこで直彦と千景の復帰が決まり、ほっとした。

 ふたりの足元のスーツケースには千景と色違いでおそろいの猫のお守りがつけられている。新しく作ったそれは神社でも好評で、ネットでも話題になり、神社への参詣者が増えた。優維が英語で紹介したので、海外からの問い合わせも来た。

「飛行機なんて初めて乗るわ」
「俺は二度目。大学の卒業旅行以来だ」
「いいなー。こんな機会、私はもう次はないかも」
「また行こう。俺が連れて行く。今度はファーストクラスで」
 頼もしい言葉に、優維は眩しく彼を見た。

 彼は今回も自分が出すからファーストクラスで行こうと言ったが、優維が反対したのだ。彼のお金を無駄に使わせたくないし、今の自分には分不相応だと思ったから。

「ハワイでは君が舞うのを見られる。楽しみだ」
「久しぶりだから失敗しないようにしないと」

「俺は幸せ者だ。神職について君と結婚して、猫を飼えることになったし、すべての夢がかなった」
「大袈裟ね」

「土日には助勤の神職と巫女を雇ったから休みもとれる。たくさんデートしよう」
「うん」
 優維はくすぐったい気持ちで頷いた。婚前には一度もしていないデートを結婚してからするなんて、なんだか不思議な気がする。

「そろそろ時間かな」
 立ち上がり、千景は手を差しだす。
 優維は笑顔を浮かべてその手を取り、スーツケースを引いて一緒に歩き出した。

 窓の外には青空が広がり、ロビーには明るい光が満ちている。
 その中を歩くふたりの足取りは猫のように軽く弾んでいた。






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