July〜眠れない夜には〜
「わかったよ。ただし、お前が寝たら速攻で帰るからな!」

「夏樹、ありがと〜!」

雛は夏樹に抱き付く。幼い頃はどちらからともなくハグをしたものの、当然大きくなってからは手すら触れなくなった。久しぶりのハグは温かく、あの頃とは全く違った感触に雛の胸が一層高鳴った。

「離れろ!……とりあえず、お前風呂入ってこい。外で待っててやるから」

「は〜い!」

雛の顔にようやく笑みが戻った。夏樹に風呂場の外で待っていてもらい、入浴を済ませる。パジャマに着替えた雛は、自室へと夏樹と共に入った。

「ほら、さっさとベッド入れ」

夏樹がベッド傍らに座る。雛は少し考えた後、名案を思い付いたと夏樹に言った。

「ねぇ、隣で小さい頃みたいに寝てくれない?」

「ハァ!?お前、何言ってるのかわかってんのか!?」

顔を真っ赤にする夏樹の腕を掴み、雛は強引にベッドに押し込んだ。そして夏樹に抱き付いたまま自分も横になる。

「えへへ。これであたしが寝ても夏樹は帰れないよ」
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