すべての愛を君だけに。
彼女じゃないと -歩 side-
「どうして俺の娘に手を出したんだ!」
怒鳴るような声が耳に痛い。
どうしてこうなってしまったんだっけ。
…そうだ、沙織が俺と雨との写真を撮っていて。
それを今日、見せるために俺たちの食事会に参加したのか…全然気づかなかった。
気付かれてない…なんてなんで思っていたんだ。
なんでもっと危機感を持たなかったんだ。
いくら後悔しても俺たちの関係をもう誰も何も知らなかった時には戻れない。
「お前も俺の大切な弟だ、お願いだから、嘘だと言ってくれ…あの写真にはなにか理由があるんだろ…?」
「……ないよ」
聞かれた問いに素直に答える。
もう隠したって仕方がない。
せめて、雨に非がないように…それだけを考えている。
兄貴の怒りの浮かぶ顔を見た。
だけど目の奥は…悲しそうに見えた。