すべての愛を君だけに。
「比嘉さんだって、俺の事見てたじゃん」
「見てない見てない」
「見てた」
「…早く勉強しよ」
話題をどうしても逸らしたくて問題を見る。
“サンサク”
…分かりません、よし答えみよ。
教科書を手に取ろうとした時、天ヶ瀬くんのシャーペンを持った手がわたしのノートに字を書く。
「こう書くよ」
達筆な字で書かれていた“散策”の文字は反対を向いて書かれていた。
「あー!散歩の字がつくんだ!ありがと!」
忘れないようにしないと。
わたしはノートに5回、散策と書いた。