イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 それはさておき、これから他の警察官さん達に会うとなると、心臓バクバクである。まぁでも、稼がせていただくのだからちゃんと仕事はやらなきゃ。


 居酒屋の個室を予約しているらしく、メンバーは私達の他に4人。その中の二人はカップルで、他は男性二人だ。となると、女性は私ともう一人という事になる。そこは助かった。

 湊さんには事前に言っておいたけれど、下戸な彼とは違って私はまぁまぁ飲める。ビールは余裕だけれど、焼酎などの度数の高いものは少し苦手。だから、今回は酔っぱらわないようにビールにしておこうと思っている。

 飲まされそうになったら彼が助け船に入ってくれるみたいだし、酔っぱらう事はないと思う。


「そう緊張しなくていい。警察官と言っても能天気な奴らばかりだからな。しっかり者は一人いるからそいつに任せておけばいい」

「そう、ですか……」

「ただお前は彼女として席に座ってるだけでいい。あとは気にするな。質問も俺が答える」


 とりあえず、私は全部彼に合わせればいいという事か。なら、何とかなりそうだ。

 少し安心しつつも、注意事項や口裏合わせなどを話していると車が駐車場に入っていった。


「……」

「どうした?」

「……いえ、なんでもないです」


 何とも、見た事のある外観のお店。……私のバイト先の一つだ。あぁ、なんてこった。

 そして、車を降りてからは手を繋いで店内に入った。「野木」という名前で予約されていたらしい。スタッフにそう伝えていた湊さんの影に隠れていると、そのスタッフと目が合った。私に気が付いたらしく、ニコニコしつつも個室に案内してくれた。

 もちろん、内心苦笑いである。そういえば明日、バイト入っていたような。となると、きっと明日は質問攻めだろうなぁ……覚悟を決めよう。

 個室につくと、数人の声がしてくる。中を覗くと、何故か女性が二人と男性が三人いた。聞いていた人数と違うような気がするのは私の勘違い?


「あ、来た来た~! 遅いよ!」

「もう飲んでるのかよ……」

「おっ! ちゃんと彼女連れてきたのか! 可愛いじゃん!」


 テーブルにはいくつかのジョッキが並んでいて、空っぽなものものもある。もしかして、もう出来上がっちゃってるのではないだろうか。顔が赤い人が一人いる。


「おい、何で早瀬がいるんだよ」

「だってぇ~私も飲みたかったんだもんっ! みんなだけでずるいじゃんっ!」


 眉間にしわを寄せる湊さんを盗み見て、何やら嫌な予感がしてしまった。今回の飲み会、大丈夫だろうか。

 見たところ、皆さん結構仲がいいようだし、パワフルだ。警察官だから?


「お前そこどけ」

「なになに、矢野は彼女の隣がいいって?」

「何とでも言え。瑠奈に飲ませようとしてるのは分かってるからな」

「瑠奈ちゃん瑠奈ちゃん、何飲む~? 焼酎いく?」

「言ってるそばから。黙れ酒豪」


 こっち、と用意された席に落ち着いた。もちろん湊さんの隣だ。だいぶ圧倒されてはいるけれど、隣に知っている方がいるから何とか頑張れそうだ。

< 22 / 98 >

この作品をシェア

pagetop