イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 そうこうしている内に時間が経ち、音がリビングに響いた。呼び出し音らしい。ここはオートロック式のマンションだからセキュリティーはしっかりしている。流石警察官の住むところは違うな。

 そして、数分後に同僚さん達が到着した。


「わ~瑠奈ちゃん久しぶり!」

「こんばんは」


 早瀬さんと、他二人がリビングに。海さんと野木さんの姿はなかった。

 皆さん慣れているようで荷物を置き洗面所に向かい手を洗いに行った。5人、と言っていたけれど来たのは3人。となると、海さん達は遅れているのかもしれない。


「おい、酒は持ってくるなって言ったろ」

「飲まなきゃやってらんないだろ」


 冷蔵庫借りるぞ~、と袋を手にキッチンへ入ってきた。袋を見るに、結構買ってきたようだ。缶や瓶の音が聞こえる。


「やった、すき焼き! 湊君ありがと!」


 冷蔵庫にお酒を収めるとくつろぎだす同僚さん。そしてキッチンに入ってくる早瀬さん。本当に慣れていらっしゃる。何回か来たことがあるからそうなるか。

 湊さんは、近寄ってきた早瀬さんに「邪魔だ」と追い払ってしまった。そこまで言わなくてもいいのでは、とも思ったけれど……私は何も言わないことにした。以前の飲み会の事があるからだ。

 今回は、何事もないように祈っておこう。

 そして、十分後に呼び出し音が鳴り、海さんと野木さんが到着した。


「お前ら運べ」

「は~い」


 テーブルがセッティングされて、皆揃って椅子に座り、食事会がスタートしたのだ。

 椅子は2つしかなかったけれど、物置らしい部屋にあったスツールが置かれていた。たびたび来る皆さんの為に用意されていたらしい。


「瑠奈、もたもたしてたらこいつらに肉食われるぞ」

「そうだよそうだよ! ほらいっぱい食べな~!」


 右隣の海さんによって私のお皿には沢山お肉がよそわれてしまった。これを食べろと。そう言っているのか。まぁ、お腹は空いているけれど、食べきれるだろうか。


「ったく……瑠奈、食えないならこっちに寄こせ」


 と、救世主である左隣の湊さんによってお肉が移動させられた。けど……


「ねぎは食うだろ」


 と、箸でつままれたねぎは私の口の前に移動させられた。私は迷うことなくねぎをパクリと食べる。皆さんの目の前で、というところはあるけれど……躊躇すれば後が怖い。

 内心苦笑いでつい30分前の事を思い出した。その時も同じことをされて「おいアルバイト」と言われてしまった。もちろん、一瞬ためらったけれどちゃんと食べた。これをやったという事は、同僚さん達の前でもやるぞという事だろうと悟り、覚悟を決めておいた。

 なら、ちゃんとお仕事はしますとも。


「おぉ、見せつけますな」

「何が?」

「あーんだなんてぇ~、美味しい事してくれるわね~♡」

「こいつがねぎ好きなだけだろ」

「へ~、瑠奈ちゃんねぎ好きなんだ。美味しいよね~!」

「は、はい」


 予想した通りに、海さんが食いついた。たぶん、湊さんはこれを狙ったのだと思う。

 まぁ、仲良しカップルを装うためにしたのだと思うけれど……内心では心臓バクバクである。ねぎは美味しいけれど、安心して食べられない。もうちょっと美味しく頂きたかったけれど仕事中なのだから我慢します。

 けれど、思った。私はすき焼きの中ではねぎが一番好きだ。もちろんお肉もしらたきも好きだけれど、やっぱりねぎが好き。だけど、そんな事は一言も湊さんに言ってない。ただ言っただけだとは思うけれど……勘が当たった、という事か。凄い。

 けれど、さすが警察官さん達だ。どんどん鍋からお肉が消えていく。食べっぷりがいい。しかも、美味しそうに食べているから作った甲斐がある。手伝うくらいしかしていないけれど、嬉しいな。
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