August〜隠したはずの気持ち〜
胸が高鳴って、どこか緊張したまま涼介は光里と話した。こうして二人きりで話すのは初めてのことである。様々な話をしているうちに花火大会の話になり、こうして一緒に行くことになったのだ。

花火が打ち上げられるのは十九時半からだ。まだ時間はある。涼介が腕時計で時間を確認していると、光里に声をかけられた。

「ねぇ、せっかくだから何か食べようよ!」

「はい。何か食べたいものとかあります?」

「ん〜。たこ焼きもいいし、フルーツ飴もおいしそうだし、牛タンやトルネードポテトもおいしそうだよね!」

「あはは。迷いますよね」

涼介と光里は笑い合う。二人を側から見れば付き合っているカップルがデートをしていると見えるのかもしれない。それが涼介にとっては苦しかった。

(先輩は俺のこと、男としてきっと見ていない。だからこんなデートみたいなこと、すごく苦しい)

しかしそれを光里に悟られるわけにはいかない。涼介は必死で笑う。恋の痛みなど気付かないフリをする。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop