一袋の愛


 三才の頃。


 お母さんと二人きりの日が多かった。お父さんは仕事が忙しく、家に帰ってくることが少なかった。
 お父さんがいない日は小さな餃子屋さんに行くことが多かった。


 いつも、餃子スープを味見させてもらって、更に夜ご飯用に買っていた。

 優しい旨味が体に染みる。そのスープが私は大好きだ。




「美味しそうに食べるね。お菓子あげるよ」

 お店のおばあちゃんがお菓子をくれる。

「ありがとうございます」

「いいのよ。いつも来てくれているから」

 優しいおばあちゃん。笑顔の可愛いおばあちゃん。

 私が行くたび、お菓子をくれた。甘いお菓子からせんべいまで。



 私の第二の家であったこの場所。別れはすぐ来てしまった。







 引っ越しが決まった。県外の幼稚園に行くことが決まったからだ。

 私とお母さんはお世話になった餃子屋さんに引っ越しを伝えに行った。

 お母さんの口から引っ越しの旨を伝えた。私は、もうここには来れないという現実に嫌気が差した。大好きな場所だったから離れがたいのだ。

「あら、引っ越しちゃうのね。さみしくなるね」

 残念がる表情を浮かべたおばあちゃん。少し待っていてと言い、店の奥に入っていく。

「引っ越しちゃうなら、これ、持ってきな。たくさん食べてね」

 私に手渡しされたパンパンのビニール袋。一袋に詰まったお菓子。中身はせんべい、飴、クッキー。その他諸々入っていた。

「もぐもぐ食べる姿が愛おしくてね。食べてほしいから買っておいたの」

「うん! ありがと!」

「わざわざすみません」

「いいのよ。引っ越しても元気でね」

「うん!」

「またこの町に来ることがあれば食べに来ます」

「楽しみにしてるよ。その頃にはもう大きくなっているだろうからね」


 最後の会話を終え、車に乗り込んだ。胸に袋を抱き、座った。


「バイバーイ!」

「じゃあね。お菓子もたくさん用意しておくからね」


 おばあちゃんの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。














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