裏社会の私と表社会の貴方との境界線

告白

不意に私は真白に抱きしめられた。
わけも分からず、私は固まってしまう。
「嬉しい…。あれは、僕にとって本当に大切な出来事だったんだ。だから、君に覚えてもらえて嬉しい」
そう言った真白の声は震えていて、胸がキュッとなった。
「雨晴のことはいろいろ調べてたんだ。だから、この学園に転入する情報をつかんですごく嬉しかったんだ。でも、君は僕のことを避けてた。必要以上に関わらないようにって」
バレてた。
みんなに対してもそうしていたから、普通だと思い込ませることができると思っていたが…。
基本的に裏社会と表社会の人間は交わってはいけない。
すぐに情を移してしまう私は、そもそも関わりを持たないようにとしていた。
「だって…私は裏社会の人間。貴方は表社会の人間なのよ?関わっちゃいけないわ…」
私が離れようとすると、きつく抱きしめてきた。
いくら私の力が強いと言っても、相手は男で敵うはずもなかった。
「俺は華恋が好きなんだ」
「へ…?」
私の声がやけに響いた。
部屋は静かなのに、私の心臓はうるさくなっている。
真白の言葉が何度も頭の中で反響する。
今、なんて言った?
「あの日会った時から、俺は華恋のことが好きなんだ。だから、俺の知らないところで泣くなよ…」
不意に変わった口調も、呼び方も。
なんだか真白の行動全てを意識してしまう。
「どうやったら。華恋の——特別に、恋人になれる?」
ブワッと熱が顔に集まった。
ありえないくらい、今私の顔は真っ赤だ。
真白は私の顔をのぞきこむ。
「やっ…い、今顔見ないで…」
そう言っても、隠した手はなんの意味もなくどけられてしまった。
恥ずかしくて顔合わせらんない。
「かわいい」
真白がほほにキスを落とした。
そのせいで顔に集まった熱がひかない。
そして、真白は耳元で。
「絶対離さないし。覚悟して」
そう言って笑みを浮かべたのだった。
それから真白は私の頭をなでて、ベッドから立ち上がった。
「落ち着くまでここにいなよ。ていうか、泊まってって」
まるで変わらない態度。
視線だけは甘ったるいものに変わっているけれど。
こんな状態で泊まっていくなんて無理。
でも、今の時間は23時過ぎ。
こんな時間に外に出るのもなんとなく嫌だし、仕方ないから今日はここは泊まらせてもらおうかな。
「ええ、そうするわ。あの、お風呂に入りたいんだけど…」
「おっけ。じゃあ風呂の準備してくる」
そう言って真白は部屋を出ていく。
私はひざの力が抜けてへなへなと座り込む。
こっちはまだめちゃくちゃ意識してるってのに、いきなり平常運転にならないでよね。
意識しないようにと言い聞かせ、私は立ち上がった。
「真白が普通なんだし、私も普通にしてなきゃね」
その後心の中はまだドキドキして真白を意識しながら過ごして、表では冷静を保つようにした。
いちいち距離が近いのも、甘ったるい視線も初めてで。
だから、ドキドキして落ち着かないのは気のせい。
そう。
これは恋心なんかじゃない、気のせいなんだ。
今はただ言い聞かせて逃げるしかできなかった。
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