裏社会の私と表社会の貴方との境界線

ソル

バタンッ。
大きな音がして、扉が閉まった。
ピリッと張り詰めた空気が、私の不安を煽る。
それから、私は沈黙を破った。
「久しぶりね、サク」
「うん。久しぶり」
なぜ攻撃をしてこないの?
明らかに攻撃する姿勢が見られない。
なにを企んでいるのだろうか。
「どうしてここに私を呼んだの?別に戦いやすさでいったらどこでもよかったでしょうに」
「う〜ん。まあ、そうなんだけどね。ここの方が能力が使いやすいから」
その時、私は気がついた。
レンとサク以外にも気配があることに。
その気配は明らかに人間のものではなく、神の力が感じられた。
「っ…!まさか貴方ソルを——」
「久しぶりやなぁ、カレン」
私の言葉を遮ったのは、そこにいた黄泉神のソルだった。
煌めく金色の髪に漆黒の闇を思わせる不思議な瞳。
シュッと整った顔はとてもきれいで思わず見惚れてしまうほど。
そして、左耳のふたつ並んだほくろ。
間違いない。
「ソル。貴方、禁忌に触れたわね。神下ろし以外では人間界には来てはいけないのよ?」
私はできる限りの冷静を保った。
しかし、恐ろしかった。
ここにわざわざ私を呼んだわけは、ソルの能力使用のため。
ソルの能力は「業火(ごうか)の炎」。
この広い空間と燃え散ることのない殺風景な部屋は、炎を扱うには最適な場所だ。
さすがに、これは予想していなかった。
「普通はそうやけど。でも、俺は事前に黄泉様に契約しにいったねん」
「…?契約?」
神同士が契約を交わすなんてなかなか聞いたことがない。
いったい、なにを契約したと言うの?
それから、ソルはニッと口角をあげて言った。
「“もし、シルヴァが死んだとして。なにがあっても、その時貴方は100年天界で生きなければならない”っていう条件付きでな〜」
それが、なにを意味するのか私にはわかる。
基本的に双子の神は片方の魂が消滅した時、もう片方も同時に消滅することになっている。
双子というのはそれほど強い力で繋がっているのだ。
つまり、ソルの場合それが適用されなくなったということ。
私は知っている。
このふたりがどれだけたがいを思い合っている兄弟か。
「貴方、そうまでしてなにがしたいっていうのよ…!?シルヴァがいない世界で生きるというのは、貴方にとって絶望と同じでしょう?」
「わかっとるわぁ、そんなこと。けどな、この戦いあのままいっとったらシルヴァが負けとるんよ」
「シルヴァが負ける…?どうしてそんなことがわかるの?それに、負けたところで死ぬわけじゃないわ」
シルヴァの魂が天界に帰るだけ。
ソルになんの影響もないはずなのに。
「黄泉様から言ってきたんや。座を下されたくなければ、カレンに勝てってな」
「どういうこと…?」
「さあな。俺に聞くなや。でも、最近入ってきたあいつが関係してるんとちゃう?」
あいつ。
思い当たるのはひとりしかいないが、これは現段階で決めつけることはできない。
どのみち、今の私には関係ない。
「ま、そんなんええやろ。それより、早速始めようや」
その言葉と同時に、さらに口角をあげるソル。
それから、彼は唱えた。
「業火の炎、力見せろや!」
ゴオッと音を立てて巻き上がった炎が爆発を見せる。
あまりの強さに、私達は上空へ飛ばされてしまった。
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