裏社会の私と表社会の貴方との境界線
予想外の行動
「本日の17時のホームルーム開始時刻までに、それぞれのクラスに行ってください。これで私からのお話は以上です。わざわざきてくださり、ありがとうございました」
そう言われて、用がなくなった私とユウは学園長室から出て行った。
バタン。
「失礼しました」
ふう…とため息をつく私とは裏腹に、ユウは何やら楽しそうな顔をしていた。
まあ、どうせ大したことはないだろうが。
昔から、ユウは何に対してもいちいち面白そうにする。
「なんで楽しそうなのよ。全く…意味わかんない」
私はユウをキッとにらんだが、逆効果だったのかまたにやにやし出した。
この顔が最高に気持ち悪い。
「だってさー俺のペアの子女子だぜー?楽しそうじゃん。それに、華恋のペア男子だろ?」
ああ…やっぱりそんなくだらない理由ね。
全く…この人の女遊びはなおらないのかね。
やれやれ、と私が首を横に振る。
昔からユウは女を引っ掛けたりするのが好きで、避ける女性もいれば近寄る女性もいた。
きっとそれは、顔がいいからだろう。
正直、私はユウの性格は嫌いだ。
ユウは来るもの拒まず去るもの追わずの人で、そのせいで恨みも相当かっている。
私も何度か刺されそうになったことがあるのだ。
きっとユウの婚約者候補である私に、恨みがうつったのね。
いい迷惑。
「その性格のせいで私は散々なのよ…」
私はユウをもう一度キッとにらむ。
「私がそういう性格じゃないって知ってるでしょう?それに、私達は調査で来たのよ?真剣にやってちょうだい」
私がきつく叱るように言うと「ちぇ、分かったよー」と言ってこれ以上何も言ってこなかった。
***
寮に戻った私は特にやる事がなく、読書や勉強などをしてホームルームが始まる前まで時間を潰していた。
今の時刻は16時。
まだ1時間ほど時間があるが、校舎内で迷ったりすることもあるかもしれないと考え、16時半には部屋を出ようと思っている。
(やる事ないし、武器磨きでもしようかしら…)
そう思って椅子から立とうとした時…。
コンコンッ。
私の部屋のドアを叩く音がした。
誰だろう?と思いながらドアノブに手をかける。
ドアを開くと、そこには思わぬ人物…ツキが立っていた。
「今大丈夫?」
「え、ええ、大丈夫だけど。…何か用かしら?」
ツキが私に話しかけてくるなんて滅多にないので、別任務でも入ったのだろうと思った。
しかし、ツキは私の予想とは全く違う事を言った。
しかも普段のツキなら絶対に言わないことを。
「僕達同じクラスでしょ?だから、一緒に行かない?」
「えっ…」
その言葉が予想外すぎてぽかんとする。
そんな私の顔を見て、ツキは表情を曇らせた。
「なに、不満なの?なら別々に行くけど」
なんとなく落ち込んでいるように見えてしまって、慌てて訂正する。
「い、いえ!ツキがそんな事を言うのは珍しいから、驚いただけで…」
疑うような目を向けてから、ふう…とため息をつかれる。
「あっそ。じゃあ30分ぐらい後でいいよね?リビング集合で」
「ええ!分かったわ…!」
そう言ってから小さくツキに手を振って、部屋のドアを閉めた。
(ツキがあんなこと言うなんて…。失礼だけど、裏があるとしか思えないわ!)
そんな事を考えたけれど、人の気持ちを決めつけてしなうのはいけないような気がして、忘れようとぶんぶん首を振る。
(よし!そろそろ、制服に着替えて準備しないとよね!)
ツキと約束したのだから絶対に時間通りに集合しないと、と思い私は準備をするために立ち上がった。
***
準備を終えた私は、今の時刻を確認しようと横目で時間を確認する。
現在時刻は16時23分。
予定より少し準備に時間がかかってしまった。
そろそろリビングに向かわなくては、と思い立ち上がる。
「それじゃ、行ってきます」
自分の部屋を見渡し、深呼吸してから部屋を出た。
***
2階の廊下を通っていると、ユウの部屋からは何かをあさっているようなゴソゴソという音が聞こえた。
まだ準備をしているようだ。
(ずいぶんと余裕をお持ちで)
レンの部屋からは微かに音がする気がするので、武器磨きでもしているのだろうと予想した。
なんとなく、ツキと一緒に教室に行く姿をユウやレンに見られたくないなと思ったので、確認をしておくことにした。
予想だとユウはからかってきて、レンはくだらないと言うだろう。
(この様子じゃあ、すぐには降りてこなさそうね…)
ツキの部屋は、よく耳を澄ましても何も聞こえない。
もうリビングにいるのだろう。
ツキはいつも集合時間の10分前にいるので、普段通りもういるだろうと元から予想していた。
ツキに分かるように、トントンと音を立てて1階に降りていく。
「ちょっと遅かったかしらね?」
ツキの姿が見えたところで、私が片手で「ごめんね」のサインをする。
すると、ツキは私から目を逸らした。
「別に…大丈夫」
相変わらず素っ気ない言い方だ。
でも、ツキの顔をよく見ると耳が少し赤くなっているように見えた。
(体調でも悪いのかしら…?)
「それより。制服、似合ってんじゃん」
普段のツキからならありえない言葉が出てきて、ものすごくびっくりした。
「ええ…ありがと。…ツキも似合ってるわよ」
(なんか恥ずかしい〜。こんなこと言われたら余計に意識しちゃうじゃん!)
ツキは白のワイシャツの上に紺色のセータを着ていて、黒色のズボンはツキのスラリとした脚線がはっきり見えるようなピッタリサイズ。
さらに、いつものように手には黒手袋をはめていた。
(はっ!ダメよ華恋!任務に集中しないと!!)
私は、思わずツキに見惚れてしまった。
顔が中性的なこともあって、今まであまり「男の子」という意識をしていなかったから…。
なんだか変な感じ。
「そ、それじゃあ行きましょうか」
「…そうだね」
お互いに見せ合って、寮の部屋の鍵を持っていることを確認する。
それぞれ確認ができたので、私はお気に入りのバラ柄のポーチにしまう。
「学校構造はさっき暗記してきた」
「ふふっ。やっぱりツキは記憶力がすごいわね。まあ、今回もツキに任せるわ!一応私も地図は持ってきたけれど…」
すると、ツキは首を横に振って呆れたようにため息をついた。
「はあ…。僕への信頼どうなってんの?まあいいけどさ」
マフィアを簡単に信じちゃいけない。
たとえそれが家族でも。
裏社会で信じていいのは自分だけと、昔からお父様に教わってきた。
「いいのよ、ツキは特別!」
ツキが目を見開いて驚きを隠せていない。
それから顔をふいっと逸らして。
「あっそ…」
またツキの顔が赤く見えたのは、多分気のせいだ。
***
「ここが僕たちの教室だね」
扉の上に、2年C組と書かれていることを確認する。
確かにここが私達の教室のようだ。
ガラッという音がして、教室の扉が開く。
「おー来てたか!俺はこのクラスの担任の森田だ、よろしくな!」
どうやら、教室から出てきたのは私達の担任の先生だったようだ。
すごく明るい先生で、口元にほくろがあるのが特徴。
身長は…175センチちょいといったところだろうか?
体格も実に男性らしく、健康的だった。
「ごきげんよう先生。私、雨晴華恋といいます。これからよろしくお願いします」
「僕は来夢ツキです…」
私とツキは、森田先生に自己紹介をする。
すると、森田先生はにこっと笑顔になった。
「おう!よろしくなー!んじゃ、俺が入ってきてーって言ったら教室に入ってきてほしい!」
いいな?という視線を送られたので、「分かりました」と言った。
1クラスの人数は約20人と聞いている。
20人の前で自己紹介をしたりするのは、さすがの私も少し緊張する。
平常心を保たないと…!と思い、心を落ち着かせようとすると…誰かが私の手をぎゅっと握った。
「へっ?!」
私の手を握っていたのは…ツキだった。
まさかあのツキが手を繋いでくるなんて、思っても見なかった事が今目の前で起きている。
「大丈夫。僕がいるから」
そう言って笑ってくれたツキの顔はとてもかっこよくて、ドキッとしてしまった。
そう言われて、用がなくなった私とユウは学園長室から出て行った。
バタン。
「失礼しました」
ふう…とため息をつく私とは裏腹に、ユウは何やら楽しそうな顔をしていた。
まあ、どうせ大したことはないだろうが。
昔から、ユウは何に対してもいちいち面白そうにする。
「なんで楽しそうなのよ。全く…意味わかんない」
私はユウをキッとにらんだが、逆効果だったのかまたにやにやし出した。
この顔が最高に気持ち悪い。
「だってさー俺のペアの子女子だぜー?楽しそうじゃん。それに、華恋のペア男子だろ?」
ああ…やっぱりそんなくだらない理由ね。
全く…この人の女遊びはなおらないのかね。
やれやれ、と私が首を横に振る。
昔からユウは女を引っ掛けたりするのが好きで、避ける女性もいれば近寄る女性もいた。
きっとそれは、顔がいいからだろう。
正直、私はユウの性格は嫌いだ。
ユウは来るもの拒まず去るもの追わずの人で、そのせいで恨みも相当かっている。
私も何度か刺されそうになったことがあるのだ。
きっとユウの婚約者候補である私に、恨みがうつったのね。
いい迷惑。
「その性格のせいで私は散々なのよ…」
私はユウをもう一度キッとにらむ。
「私がそういう性格じゃないって知ってるでしょう?それに、私達は調査で来たのよ?真剣にやってちょうだい」
私がきつく叱るように言うと「ちぇ、分かったよー」と言ってこれ以上何も言ってこなかった。
***
寮に戻った私は特にやる事がなく、読書や勉強などをしてホームルームが始まる前まで時間を潰していた。
今の時刻は16時。
まだ1時間ほど時間があるが、校舎内で迷ったりすることもあるかもしれないと考え、16時半には部屋を出ようと思っている。
(やる事ないし、武器磨きでもしようかしら…)
そう思って椅子から立とうとした時…。
コンコンッ。
私の部屋のドアを叩く音がした。
誰だろう?と思いながらドアノブに手をかける。
ドアを開くと、そこには思わぬ人物…ツキが立っていた。
「今大丈夫?」
「え、ええ、大丈夫だけど。…何か用かしら?」
ツキが私に話しかけてくるなんて滅多にないので、別任務でも入ったのだろうと思った。
しかし、ツキは私の予想とは全く違う事を言った。
しかも普段のツキなら絶対に言わないことを。
「僕達同じクラスでしょ?だから、一緒に行かない?」
「えっ…」
その言葉が予想外すぎてぽかんとする。
そんな私の顔を見て、ツキは表情を曇らせた。
「なに、不満なの?なら別々に行くけど」
なんとなく落ち込んでいるように見えてしまって、慌てて訂正する。
「い、いえ!ツキがそんな事を言うのは珍しいから、驚いただけで…」
疑うような目を向けてから、ふう…とため息をつかれる。
「あっそ。じゃあ30分ぐらい後でいいよね?リビング集合で」
「ええ!分かったわ…!」
そう言ってから小さくツキに手を振って、部屋のドアを閉めた。
(ツキがあんなこと言うなんて…。失礼だけど、裏があるとしか思えないわ!)
そんな事を考えたけれど、人の気持ちを決めつけてしなうのはいけないような気がして、忘れようとぶんぶん首を振る。
(よし!そろそろ、制服に着替えて準備しないとよね!)
ツキと約束したのだから絶対に時間通りに集合しないと、と思い私は準備をするために立ち上がった。
***
準備を終えた私は、今の時刻を確認しようと横目で時間を確認する。
現在時刻は16時23分。
予定より少し準備に時間がかかってしまった。
そろそろリビングに向かわなくては、と思い立ち上がる。
「それじゃ、行ってきます」
自分の部屋を見渡し、深呼吸してから部屋を出た。
***
2階の廊下を通っていると、ユウの部屋からは何かをあさっているようなゴソゴソという音が聞こえた。
まだ準備をしているようだ。
(ずいぶんと余裕をお持ちで)
レンの部屋からは微かに音がする気がするので、武器磨きでもしているのだろうと予想した。
なんとなく、ツキと一緒に教室に行く姿をユウやレンに見られたくないなと思ったので、確認をしておくことにした。
予想だとユウはからかってきて、レンはくだらないと言うだろう。
(この様子じゃあ、すぐには降りてこなさそうね…)
ツキの部屋は、よく耳を澄ましても何も聞こえない。
もうリビングにいるのだろう。
ツキはいつも集合時間の10分前にいるので、普段通りもういるだろうと元から予想していた。
ツキに分かるように、トントンと音を立てて1階に降りていく。
「ちょっと遅かったかしらね?」
ツキの姿が見えたところで、私が片手で「ごめんね」のサインをする。
すると、ツキは私から目を逸らした。
「別に…大丈夫」
相変わらず素っ気ない言い方だ。
でも、ツキの顔をよく見ると耳が少し赤くなっているように見えた。
(体調でも悪いのかしら…?)
「それより。制服、似合ってんじゃん」
普段のツキからならありえない言葉が出てきて、ものすごくびっくりした。
「ええ…ありがと。…ツキも似合ってるわよ」
(なんか恥ずかしい〜。こんなこと言われたら余計に意識しちゃうじゃん!)
ツキは白のワイシャツの上に紺色のセータを着ていて、黒色のズボンはツキのスラリとした脚線がはっきり見えるようなピッタリサイズ。
さらに、いつものように手には黒手袋をはめていた。
(はっ!ダメよ華恋!任務に集中しないと!!)
私は、思わずツキに見惚れてしまった。
顔が中性的なこともあって、今まであまり「男の子」という意識をしていなかったから…。
なんだか変な感じ。
「そ、それじゃあ行きましょうか」
「…そうだね」
お互いに見せ合って、寮の部屋の鍵を持っていることを確認する。
それぞれ確認ができたので、私はお気に入りのバラ柄のポーチにしまう。
「学校構造はさっき暗記してきた」
「ふふっ。やっぱりツキは記憶力がすごいわね。まあ、今回もツキに任せるわ!一応私も地図は持ってきたけれど…」
すると、ツキは首を横に振って呆れたようにため息をついた。
「はあ…。僕への信頼どうなってんの?まあいいけどさ」
マフィアを簡単に信じちゃいけない。
たとえそれが家族でも。
裏社会で信じていいのは自分だけと、昔からお父様に教わってきた。
「いいのよ、ツキは特別!」
ツキが目を見開いて驚きを隠せていない。
それから顔をふいっと逸らして。
「あっそ…」
またツキの顔が赤く見えたのは、多分気のせいだ。
***
「ここが僕たちの教室だね」
扉の上に、2年C組と書かれていることを確認する。
確かにここが私達の教室のようだ。
ガラッという音がして、教室の扉が開く。
「おー来てたか!俺はこのクラスの担任の森田だ、よろしくな!」
どうやら、教室から出てきたのは私達の担任の先生だったようだ。
すごく明るい先生で、口元にほくろがあるのが特徴。
身長は…175センチちょいといったところだろうか?
体格も実に男性らしく、健康的だった。
「ごきげんよう先生。私、雨晴華恋といいます。これからよろしくお願いします」
「僕は来夢ツキです…」
私とツキは、森田先生に自己紹介をする。
すると、森田先生はにこっと笑顔になった。
「おう!よろしくなー!んじゃ、俺が入ってきてーって言ったら教室に入ってきてほしい!」
いいな?という視線を送られたので、「分かりました」と言った。
1クラスの人数は約20人と聞いている。
20人の前で自己紹介をしたりするのは、さすがの私も少し緊張する。
平常心を保たないと…!と思い、心を落ち着かせようとすると…誰かが私の手をぎゅっと握った。
「へっ?!」
私の手を握っていたのは…ツキだった。
まさかあのツキが手を繋いでくるなんて、思っても見なかった事が今目の前で起きている。
「大丈夫。僕がいるから」
そう言って笑ってくれたツキの顔はとてもかっこよくて、ドキッとしてしまった。