裏社会の私と表社会の貴方との境界線
「どう?美味しい?」


食事を始めて数分。


謎肉とやらと食べる真白の姿を見て、私は彼に聞いた。


だって味は気になるもの。


「んー、多分?味付けは塩かな〜」


「多分って何よ、全くもう…」


はっきりしない回答にあきれながら、私は食事を再開する。


少し経った後、真白がはしを置いて私に言った。


「なんかごめんね」


「え?何が?」


「いろいろ巻き込んじゃってさ。雨晴の負担も大きいだろ?」


そういうことか、と納得した。


人の心配をするところ、そういう優しさが私にはとても嬉しい。


「いいのよ、気にしなくて。貴方達を見てるとね、なんだか昔に自分を見てる気分になるの」


「昔の…雨晴?」


「そう」


前世、私は家柄こそ高かったものの生活は最悪なものだった。


家族として扱われず死にたいとさえ願う毎日。


カレン・アイリスとして見られるのではなく、魔力の少ない子として見られる。


比較される。


それが嫌だったけど、いつしかそんな感情も忘れた。


「嫌なことがあるとね、死にたいとさえ願ったわ。でも、そうはしなかった。私の生きる理由は親友のためだった。貴方達は兄妹のためよね。同じだわ。同じ目をしてる」


真白の目を真剣な顔で見た。


その瞳には苦しみと後悔と、兄妹への深い愛情がある。


いい道を進んでいるのね。


「それって…」


「ごめんなさい。今話す勇気はないわ。でも今、ただひとつ言えることがあるとすれば…」


それは、彼らを励ます言葉。


「今の道を進みなさい。妹を、弟を信じなさい。今の時間を大切にしなさい、有限のこの時間を」


これは、はたして真白に対して言っていたのだろうか。


自分にかもしれない。


私の時間は有限で、18歳を迎えれば必ず死が近くなる。


後悔はしてほしくない。


この子達の人生は一度きりなんだから。


「うん、うん。ありがとう…」


泣きそうな真白をみて、優しく笑いかけるのが限界だった。


あと少し、自分の役割を全うしなければ。


***


その日の夜、私は覚悟を決めて琉愛の入院している病院に来た。


コンコン。


「…だあれ?」


「華恋よ。入ってもいいかしら?」


琉愛にそう問いかけると、静かになってしまった。


返事が返ってこない。


これは、入っていいということなのかしら。


「入るわね」


そう言って、私は病室のドアを開けて琉愛のもとへいった。


私が隣に立っても何も言わず、ただただ窓の外の景色を見ているだけだった。


ベッドの横にあったイスに座る。


それから数分が経って、彼女が口を開いた。


「なんの用があって来たの?しかもひとりで」


「…貴女には、伝えなくちゃと思ってね」


「何を?」


その時、琉愛は初めて私の方を見た。


相変わらずの表情。


その表情にひるまず、私は琉愛に言った。


「知りたいんでしょう?私の過去を。あとは、貴女に伝えたいことがあったから」


過去を調べられていたことを知っていた。


きっと、同じ環境にいる私に興味を持ったのだろう。


私はそれに不快感を覚えた。


いや、それで確信したのだ。


だから彼女に私から話そうと思った。


「聞く。教えて」


「ええ、わかったわ。よく聞くのよ」


私は語り出した。


それと同時に、真白との通話を始めた。
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