離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 引っ越し用の段ボールを手にキッチンに移動した美鈴は、食器やキッチン用品を一つ一つ確認していく。

 結婚後に購入したものは基本的にはここに置いていき、元々美鈴が持ってきたものだけ新居に運ぶ予定だ。千博は好きなだけ持って行っていいと言ってくれているが、それは遠慮させてもらった。二人の思い出が詰まったものを一人で見れば、つらくなるような気がして。

 新居で気持ちを新たに暮らすためにも、未練が残ってしまような品はすべて置いていくつもりだ。

 美鈴はもう仕舞っても構わないものたちを段ボールに詰めていく。割れ物は新聞紙にくるみ、隙間にも緩衝材としてくしゃくしゃにした新聞紙を詰める。

 そうしてあらかた仕舞えるものを詰め終えたところで、千博が仕事から帰って来た。まだ全部は詰め終えていないが、荷造りは食事が終わるまで一度中断した方がいいだろう。

 美鈴は段ボールを端に寄せ、念のためにもう一度だけ食器棚を確認する。

 すると、先ほどは気づかなかったマグカップの存在に気づいた。デザイン的には女性向けのものだが、そのマグカップを自分で持ってきた記憶がない。かといって、千博が持ってきたものにも見えない。

 これは千博に確認して、判断した方がいいだろう。

 美鈴は千博がいるであろう寝室のドアをノックする。中から「どうぞ」という声が返ってきたのを確認し、申し訳程度にドアを開けて顔を覗かせた。
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