離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「連絡はできるんだろ? 今からでもやり直したいって言ったらどうだ」

 あれだけ傷つけておいて、今さら復縁なんて望めるわけがない。乾いた笑いがこぼれ出る。

「はっ、美鈴はそんなこと望まないよ」
「本当にそうか? 美鈴ちゃんに訊いてもいないのに、そんなことわからないだろ」
「わかるさ。僕の顔を見るのも嫌なはずだ」
「だからそうやって決めつけるなよ。大体お前自身はどうなんだよ。美鈴ちゃんといたいんじゃないのか?」

 自分はどうしたいのか。そんなことはわかりきっている。美鈴を泣かせたあの日に散々思い知った。

 けれど、自分の気持ちなどどうでもいい。そんなことよりも千博が強く望むことは、ただ彼女が笑顔であることだ。あの顔に元の笑みが戻ってくれればそれでいい。それだけを願っている。

「……僕は、美鈴が幸せならそれでいい」
「あー、もう。本当に不器用だな! お前を見てるとこっちがイライラしてくる」
「そうか。だったら、早く次のミーティングに行って来いよ。時間だろ?」

 手嶋はまだ何か言いたそうにしていたものの、次の会議が迫っていることは本当だったから、渋々といった顔で出て行った。

 一人残った千博はその顔に切ない笑みを浮かべる。美鈴の話題が出るとひどく胸が締めつけられる。

 時が経てば色褪せると思っていた感情は日を追うごとに色濃くなり、美鈴を思い出さない日は一日もない。切なさが募りに募っていく。

 離婚を前提に交際していたあの半年の時間。美鈴にもこんな思いをさせていたのかと思うと胸が苦しくてたまらない。あのときに愛を返してやれなかったことが本当に悔やまれる。

 できることならばこの罪の償いに、美鈴の苦しみをすべて肩代わりして、美鈴をそこから解放してやれたらと願うばかりだ。

 千博は愚かな自分に自嘲の笑いをこぼした。
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