離婚を前提にお付き合いしてください ～私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした～

「で、二人はいつ再婚すんの？　美鈴ちゃんが帰国したら？」

　手嶋の問いに、千博が首を振って否定する。

「いや、しばらくは結婚前提の交際を続けるよ。美鈴が僕の気持ちを心から信じられるようになるまでは、無理に進めたくない」

　美鈴と千博は顔を見合わせ頷き合う。もちろん千博の気持ちをもう疑ってはいないが、心から信頼し合える関係になるにはもう少し時間が必要だと思っている。

　手嶋は千博の返答にうんうんと頷いている。

「確かにそれがいいかもな。お前も自分の気持ちに向き合う時間が必要だろうし――」

　そこまで言ったところで、手嶋はなぜか慌てた様子で美鈴に弁解を始める。

「変な意味じゃないからな。相馬は自分のことに鈍感だから、美鈴ちゃんへの気持ちを素直に表に出すのに時間がかかるだろうって意味で。相馬が美鈴ちゃんにべた惚れなことは確かだよ。俺が保証する！　そこは心配しなくていいから」

　千博の愛が偽りだと、美鈴に誤解されることを心配したらしい。

　今の千博は眉を寄せて苦しそうに愛していると告げてくるのだ。不器用に愛を伝えてくれる彼の気持ちが嘘だとは思っていない。

「ふふ、大丈夫ですよ。わかっています。千博さんの気持ちはちゃんと伝わっているので」
「そっか。本当に通じ合ったんだな……よかった。本当によかったよ」

　一人で涙ぐむ手嶋に全員が笑いをこぼす。こんなに情に厚い人が千博のそばにいるのだと思うと美鈴はとても嬉しかった。