離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 千博は淡々とその道しかないと語るが、手嶋は納得がいかないという表情をしている。

「言う通りにって言ったってどうするんだよ」
「さあ。でも、偽りでなく本当の僕として接しろと言われているからそうするさ」

 美鈴がそれを求める意味が千博にはわからないが、偽りの愛を演じることをやめるだけなら難しいことはない。愛することをやめればいいだけだ。

 千博の言葉を聞いた手嶋はなにやら小さくぶつぶつと呟いている。

「そう言う意味か。それなら――」

 千博に向かって言っているわけでもないようだからと、手嶋には構わず思っていることをぽつりとこぼす。

「そんなことをしても何の意味もないと思うけどな」

 離婚と交際はどう考えても対極にあって、セットで考えるものではない。離婚をすると決めているのに、わざわざ交際をしても何の意味もないだろう。それも偽りの愛をなくした上での交際など本当に無駄でしかない。

 美鈴は何か期待をしているのかもしれないが、愛を持たない千博に期待をしたところで何も生まれはしないのだ。

 しかし、千博のそんな考えに手嶋は同意してはくれないようだ。
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