離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「ありがとうございます。すごく助かります。これだけの情報集めるの大変でしたよね」
「いえいえ。知り合いに訊いただけですから、そうでもありませんよ」

 そんなわけがないと、この資料を見ればわかる。各教室の所在地や授業形態、対象学年といった基本情報から、教室内の雰囲気や講師の募集状況、採用ポイントといった簡単には得られない情報までもが書かれている。

 しかも、すべての情報がきれいに整理されていてとても見やすい。磯崎がわかりやすくまとめておいてくれたのだろう。時間を割いて対応してくれたことがよくわかる。

 美鈴はもう一度磯崎に向かって心から感謝の意を述べた。

「本当にありがとうございます。参考にしますね」
「はい、ぜひ」

 柔和な磯崎の笑みが、以前の千博の笑みと重なる。優しいところもあの頃の千博と同じ。けれど、磯崎は生徒にもよく慕われているし、千博とは違って少し不器用な感じもあるから、この人に偽りなどきっとないだろう。

 千博とのことがあって、今は親切心というものに少し敏感になってしまっているところがあるが、磯崎や塾長の好意は素直に受け取るようにしている。それが美鈴にはいいリハビリになっていて、彼らに直接言いはしないが心の中でいつも感謝しているのだ。
< 69 / 216 >

この作品をシェア

pagetop