はるけき きみに  ー 彼方より -
「なにっ、お前、異人だな。お前らには関係ないことだ、邪魔をするな」
「いや、見過ごせないさ、彼女は大事な人だからね」

 紫音がマシューを見る。
 ・・だいじな、ひと?

「なんだその言い草は」
「そうだ、お前ら異人が来るようになってこの堺は変わったんだ」
「我が物顔に街を歩き回って風紀を乱して、我々がどれほど迷惑しているか」

「それは俺たちじゃない」
 マシューが睨み返す。
「堺の街を歩いたことはないんだからな」

「とにかく目障りなんだよ。目の前にいることだけで腹がたつんだ」
 侍がジリッと間合いを詰める。

 と、そのとき紫音が、
「ちょっと待って。マシュー、私は大丈夫よ」
 まるで取って付けたように言う。

 かたや侍には、
「私に聞きたいことがあるんだったわね。あの裏の屋敷に行くんでしょう、だったら早く行きましょう」

 え? と思った。
 その紫音の視線を追った。

 侍がマシューの死角で刀を抜いていた。
 ・・まさかここで切りつけようとするのか。

 とっさに身構える。
 だが自分は素手しかも相手は三人だ。

「にげてマシュー、ここはいいからあなたは逃げて」
「逃げろって? できる訳ないだろう、こんな状態で」

「ええいっうるさい、黙れ!」
 刀が振り上げられた。

 万事休すかに見えた。
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