The previous night of the world revolution5~R.D.~
わざわざ俺の部屋までやって来て行き倒れるとは、一体何処の迷惑者だ、と思ったら。

「あれ…。お前、ルーチェスじゃないか…」

「あ、本当だ。よく見たらルーチェスですね」

よく見なくても分かってやれよ。

お前の弟子だろ。

で、そのルーチェスが、何故行き倒れてる?

「おい、しっかりしろ。お前皇太子だろ。皇太子が行き倒れるな」

「…」

ゆさゆさ、と揺さぶってみる。

沈黙。

とりあえず、息はあるようだが。

「大丈夫か?」

「…聞いてください」

あ?

「僕は今…。人生で初めての挫折を味わっています…」

「は…?」

「この歳になるまで、一度も挫折したことがなかったのだと気づき、自分の甘ったれた人生を心から恥じ、自己嫌悪で一杯です」

「お、おう…?」

よ、よく分からないけど。

あんまり自分を責めるのは、良くないと思うぞ。

「…ルレイア師匠」

「はい?」

「…死にたいときって、どうしたら良いと思いますか」

やべぇ。

なんか知らんけど、ルーチェスの奴、めちゃくちゃ追い詰められてる。

嫁に捨てられたときのルヴィアみたいになってる。

ここは、何としても宥めなければならないところなのに。

ルレイアは。

「死ねば良いんじゃないですか?」

「こら!」

お前、なんてことを。

お前が言うと洒落にならんから、やめろ。

「ですよね…。分かりました。では、切腹します」

「やめろ」

よりにもよって、何でそんな残酷な方法なんだ。

第一、俺の部屋でやるな。一生トラウマになるだろ。

「一体何があったんだよ?」

「…に、…しました」

え?

「聞こえなかったんだけど…」

「…プロポーズに、失敗しました」

「…」

…。

…。

…。

「…ドンマイ」

他に何て言ったら良いのか分からなかった。

ごめん。俺薄情だな。

「ドンマイじゃないですよ…。これで僕は、一生寂しくエロ本で抜かなければならないことに…」

それは、行き倒れて自殺を考えるほどショックなことなのか?

「って言うか…お前、結婚を考えるような相手がいたんだな…」

それ男?女?

「いますよ…。馬鹿にしてます?自分が既婚だからって、関係ないみたいな顔して」

俺、お前庇うのやめて良いかな。

誰が既婚だって?

俺は独身だ馬鹿。

「辛い…。人生で今、一番辛い…。こんなつまらないことが、今までの人生で一番辛いなんて…なんて糞みたいな人生を送ってるんだ、僕は…」

「…」

もっと、素直に悲しんで良いと思うけどな。

何でそんなに謙虚なのか。

すると、ルレイアは。

弟子を慰めてやるのかと思ったら。

「…甘ったれるな!」

あろうことか、傷つきに傷つき、自己嫌悪で死にかけているルーチェスの後頭部に。

ルレイアチョップを食らわせた。

お、おま。
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