The previous night of the world revolution5~R.D.~
翌朝。

「じゃあ、行ってくるよフューニャ」

「はい。夕食は何が良いですか?」

夕食か…。

昨日は煮込みハンバーグだったから…今日は…。

「魚が良いかな」

「分かりました。では、生き血の滴るビチビチ跳ねてる新鮮な奴を、生きたまま包丁でかっ捌いて、調理しましょう」

「…」

何だろう。

新鮮なのはよく分かるんだけど。

フューニャが言うと、なんか…凄く、恐ろしい何かを感じる。

「それじゃ…行ってきます」

「えぇ、行ってらっしゃい。気をつけて」

いつも通り、行ってきますのちゅーをして。

いざ、今日もお仕事。

ガチャ、と玄関の扉を開けると。

丁度同じタイミングで、お隣の部屋の玄関も、ガチャ、と開いた。

…え?

「…あ、おはようございます」

「…」

「?どうしました?」

…隣から出てきたのは。

件の、ルーチェス・アンブローシアさんだった。

…嘘だろ。

他人の空似…?

俺は、思わず玄関に引っ込んで、扉を閉めてしまった。

本能的に、そして無意識に、見なかったことにしようとしてしまったのだろう。

「…何ですか。もう帰ってきたんですか?」

怪訝な顔のフューニャ。

違うんだよ…。ちょっとあの…。

「今の、ご近所さんでしょう?丁度良かった。旦那さんの方には挨拶していませんでしたし、会ってきましょう」

「ちょ、ちょ、ま、フューニャ!」

俺の制止も間に合わず。

フューニャは大胆にも扉を開けてしまった。

な、なんてことを。

こうなったら仕方がない。フューニャだけでも、俺が何とか守っ…、

「おはようございます、お隣さんですね」

「はい。ルーチェス・アンブローシアと言います。宜しくお願いします」

「えぇ、こちらこそ。フューニャ・クランチェスカです。仲良くしましょうね」

…あれ?

なんか…あれ?

思ってたのと違うぞ。

「ほらルヴィアさん、同僚さんじゃないんですか」

「あ、え、えあ」

同僚どころか、上司だけど。

ぐい、とフューニャに押されて前に出る。

対峙する、俺とルーチェスさん。

…こえぇ…。

しかし。

「あなたは見たことがあるような…。確か、ルルシーさんのところの準幹部でしたね」

ルーチェスさんは、俺の顔を覚えていたらしい。

マジか。直接会ったことはないはずなのだが。

「は、はい…」

「名前を伺っても?」

「る、ルヴィアです…。ルヴィア・クランチェスカ…」

「成程、ルヴィアさんですね。僕、ルーチェス・アンブローシアです。名前覚えてくれました?」

「はい…」

昨日、加入の挨拶をしてくれた時点で覚えてます。

「準幹部の隣の部屋とは。不思議な偶然もあったものですね」

ぐ、偶然…なのか?本当に?

「ルーチェスさん…あの、このマンション…誰に紹介されて…?」

「?ルレイア師匠ですけど」

…ルレイアさん。

全ては、あなたが元凶だったんですね。
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