エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

デイジー <平和>

　「...くしゅんっ」
　四月の中旬にさしかかっても関東ではまだまだ花粉の飛散量が多く、花粉症の私にとっては辛い時期。今年は例年よりスギ花粉が大量飛散しているとニュースで見たので、今日もマスクにメガネという完全防備スタイルで出勤する。
　職場である香月総合病院は、ほぼ全ての診療科を備えた中規模総合病院。この地区でのプライマリケアの中心になるとともに、専門診療科も充実していて高度専門医療も提供している。
　その中でも特に、より高度な専門医療技術を求め多くの患者さんが来院するのが脳神経外科。院長は数多の脳腫瘍患者を死の淵から救ってきたスーパードクターと言われ、メディアでも紹介されるほど。

　私 宮野優茉(みやの ゆま) は、この春外来受付から脳神経外科病棟のクラークに異動して二週間が経ち、ようやく入院患者さんの手続きやカルテ作成管理などの事務作業に慣れてきた所だ。
　今日もPCを立ち上げまずは病棟管理日誌に目を通し、業務の指示など急ぎのものがないかを確認していると「おはよう、優茉ちゃん」と先輩の天宮涼子(あまみや りょうこ)さんが隣の席に座った。
　彼女は二年ほど前からここで働いており、つい先月までは一人で全ての作業をこなしていたという。クラークは病棟ごとに一人というのが一般的だけど、脳外は常にほぼ満床なうえに先生の人数も多い為クラークの人数も増やす事になったそう。

　天宮さんは仕事が出来るのはもちろん、忙しい中でもいつも優しく教えてくれる本当に素敵な先輩。その上、スラっと長い手足にいつもツヤツヤの綺麗な黒髪を仕事中はハーフアップにしている。きちんとケアされた爪先まで綺麗で、大人の女性という雰囲気に憧れてしまう。
　私といえば...母親似らしいくっきりとした二重まぶたではあるものの、小さめの鼻に少し厚めの唇。肩下まである少し癖のある髪を一つに纏めていて、身長も高くも低くもない。童顔なせいもあり、今でも大学生と間違えられる私と天宮さんとでは、同じ制服を着ていても全く別物に見えてしまい初めは落ち込んだ。