エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
 先生のお家は想像以上に広く、リビングの大きな窓からの景色は見晴らしも良くとても素敵だった。
 すっかり日も沈み、夕食はどうしようかという話になった時「もし良ければ、私が作りましょうか...?」そう提案すると、先生は驚いたような顔で黙ってしまった。
 その表情を見て、余計なお世話だったとすぐに後悔した。素敵なお家に住まわせてもらうし私が出来る事はやろうと初めから決めていたけれど...私はただの同居人で本当の婚約者じゃない。やっぱり干渉するような事をしてはいけない...
 「すみません!余計な事はしないように...」
 「嬉しい、ありがとう。優茉が疲れていなければ手料理が食べたい」そう私が言い終わる前に、満面の笑みを向けられた。
 ...先生って、こんな顔で笑うんだ...
 微笑む姿は見たことがあったけれど、こんなに無邪気な笑顔は初めて見た...。不覚にもドクンっと心臓が跳ね、どこを見たらいいのか分からなかった。
 すると先生は「近くにスーパーがあるから買い物に行こう」とすぐに車のキーを持って足早に玄関の方へと向かったので急いで着いて行った。

 結局先生にも手伝って頂き、テーブルへと運び二人で手を合わせて食べ始めると、先生は箸の持ち方や食べ方も綺麗でまたつい見つめてしまった。
 すると目が合い「すごく美味しい!味付けが優しくて俺の好みだよ」とまたあの笑顔で言われドキッとした。
 「よ、よかったです。私が作るなんて言っておきながら、たくさん手伝って頂いてすみません。でも一緒にお料理をする事もスーパーでお買い物をする事も、なんだかとても楽しかったです」
 「俺も楽しかったよ。それに、手料理を食べるのなんていつぶりかわからない。心まで癒されたよ」
 「あの、ご迷惑でなければ朝ごはんとお弁当も作りましょうか...?」
 「嬉しいけど、本当に優茉の負担にならない?」
 「大丈夫です!」
 「ありがとう、でも本当に無理はしないで。優茉も仕事をしているんだし大変な時は俺が何か買ってくるから」
 お節介が過ぎたかなとまた言ってしまってから反省したけれど、提案を受け入れてもらえた事も先生の気遣いもとても嬉しかった。
 それにこの間、長時間のオペの後先生が過労で倒れたと聞いた。みんなが噂をしていたのを耳にしただけだったけれど、眩暈がして休んでいたのは本当みたいだし、私がいる間くらいしっかり栄養のある物を食べてもらいたいな...。

 「でも優茉、一つ勘違いしないでほしいんだけど...」
 つい思考が飛んでいると、そんな先生の言葉にハッとした。勘違い... そうだった、私は同居を頼まれただけ。先生の生活を乱すような事はしちゃいけなかったんだ...。
 「すみません、余計な事はしないようにします。ご飯は自分の分を作るので一緒にと思っただけで...」そう慌てて言い訳のような言葉を並べる私に、先生は一瞬キョトンとする。
 「待って、違う。そんな事思ってない!ただ俺は、一緒に住んで欲しいとは言ったけど家政婦のような事をして欲しいわけじゃないんだ。俺も自分の事は自分で出来るから、あまり気を遣ったり頑張らないで欲しいって言いたかっただけで...」
 「...え? わ、わかりました」
 「優茉はきっと自分でも気がつかないうちに溜め込んで頑張りすぎるタイプだろう?この間の発作もそうだっただろうし。ご飯を作ってくれるのは本当に嬉しいよ。だけどそれで優茉の負担になるのは絶対に嫌だから、俺に気を遣って無理をするのはやめて欲しい。約束して?」
 「...はい」
 先生には頭の中を読まれているのではないかと思う時がある。隠し事をしてもすぐにバレてしまうような...そんな感じがする。
 なんだか不思議な気分だったけれど、一つ分かったのはやっぱり先生はとても優しい人だという事。
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