運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

運命みたいな恋

春、4月。
桜の蕾も大きく膨らみあと数日で開花を迎えようとする暖かな日に、私は郊外にある小さなホテルの一室で鏡の前に座っていた。
身にまとうのは真っ白なウエディングドレス。
光沢のあるシルクが窓から差し込む春の日に照らされ、自分とは思えないくらい輝いている。

「梨々香さん、とっても奇麗よ」

声を掛けながら部屋に入って来たのは小さな女の子を抱いた沙月さん。
スレンダーな体形と綺麗に巻かれた肩越しのウエーブがいつもながらの美しい姿。
黙っていたらお母さんには見えないのだけれど、実は二人の子供を持つ母でもある。

「なんだか恥ずかしいです」
「何言っているの、今日は主役なんだから堂々としていなさい」
「はい」

実は今日、私は徹と結婚式を挙げる。
とはいえ、身内とごく親しい友人だけを呼びささやかに行うウエディングパーティーで、かたぐるしいことはすべて省いた和気あいあいとした食事会になる予定だ。
< 175 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop