鳥居先輩は嘘をつかない
「あのさ、香苗ちゃん」
「何?」
「香苗ちゃんは、鳥居先輩に会ったことないんだよね?」
「うん。実は、試そうと思ったことはあるんだけど、いつも神楽木先生がいてできないんだよね」
「え、そうなの?」
昨日、そしてさっき見た保健室の光景を思い浮かべる。
いつもなら保健室にいるはずの神楽木先生がいなかったのは、すごくラッキーだったらしい。
しかも、昨日と今日連続で――でも今は神楽木先生が見つからなくて困ってるんだけど……。
うまくいかないなぁ、と思いながら、
「香苗ちゃん、あの、他に何か知らない? 鳥居先輩に関することで」
と香苗ちゃんに聞いた。
「鳥居先輩に関することかぁ……。あっ」
「何?」
「鳥居先輩に関することってわけじゃないんだけど、職員室の裏に、裏庭があるのわかる?」
「うん、すぐそこだよね」
「そこにね、小さい鳥居があるらしいんだよね」
「神社みたいな?」
「そう。でも、30センチくらいの。裏庭の、奥の方。あ、ほら、先生たち用の校門がある横に、すっごく大きな茂みがあるじゃない? あそこの中に」
「ありがとう、香苗ちゃん!」
「あっ、でもそれが鳥居先輩に関係あるかどうかは――」
香苗ちゃんが後ろの方でそう言っていたけれど、わたしはもう走り出した後だった。
それに、なんでだかわからないけど、なんとなく、そこは鳥居先輩に関係がある、って気がした。
靴箱でうわばきを脱ぐと、スニーカーを足にひっかけて、走りながらトントンとつま先を地面に打ち付ける。
玄関はみんなの靴が運んできた校庭の砂で、じゃりじゃりと音が鳴った。
手のひらににぎっている五円玉と、鳥居の描かれた紙をもう一度ぎゅっとにぎり直し、わたしは勢いよく走りだした。