わたしを「殺した」のは、鬼でした

蜜月

 目を覚ますと、千早様が眠っていた。
 途端にどきりと鼓動が跳ね、かあっと顔が熱くなる。

 千早様と夫婦になって五日。
 まだ……慣れない。

 わたしをしっかりと腕の中に抱き込んで眠っている千早様は、とても穏やかな表情をなさっていた。
 千早様の妻となって、わたしは下女ではなくなっているけれど、朝の弱い千早様を起こすのは変わらずわたしの役目である。
 だけど毎朝、千早様の腕の中から出たくないとも思ってしまって、ここのところ、ずっとあと少し、もう少しだけと葛藤している。

 そーっと千早様の胸の耳をつけると、とくとくと鼓動の音が聞こえてきて安心する。
 千早様の腕の中でもうひと眠りしたいところだけれど、あんまり遅いと青葉様……青葉さんが困るだろう。
 名残惜しいような気がしつつも、わたしは、千早様の腕の中から声を上げた。

「千早様、起きてくださいませ。朝ですよ」

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