わたしを「殺した」のは、鬼でした

変化

「おやおや」

 あきれたような、それでいてどこか面白そうな声に声を上げると、透けるほど薄い桃色の被衣(かずき)を纏った綺麗な女性が立っていた。

 ……お客様、かしら?

 本日来客があるとは聞いていなかったけれど、そういうこともあるだろう。
 玄関前を履く手を止めて、お邪魔にならないように隅の方によければ、彼女は風に揺れる柳のようにしなやかな動作で門から玄関までを歩いてくる。
 そして、わたしの前で足を止めると、紅を刷いた形のいい唇を、ニッと持ち上げた。

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