ソレが出て来る話を聞かないでください
ソレの首は伸びていてロープはキツク首に食い込み、足元からは黒い体液が流れ出していました。
「い……い」

叫びたいのに声が張り付いて叫ぶこともできません。
逃げ出そうとして足を絡ませ、その場で激しく転倒してしまいました。

「彩音! 立て!!」
悟志が叫びますが、私は立ち上がることができませんでした。

恐怖で体が思うように動かず、腰が抜けてしまったのです。
そのふと気が付けばソレが畳の上に立っていました。

そしてジィーーーとこちらを見つめているのです。
「さ、悟志だけでも逃げて!」

必死になって叫びましたが、悟志は逃げませんでした。
「俺にはアレが見えてるだけだ。でも、彩音は……」

さとしがそこまで言ったとき、ソレが一瞬で移動して私の目の前に来ていました。
私はソレを凝視しました。
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