ソレが出て来る話を聞かないでください

☆☆☆

翌日私は一度制服姿で家を出て、すぐに悟志の家に行きました。
悟志の家は共働きで、両親ともすでに家にいませんでした。

「これ、母親の服だけど」
そう言って悟志が出してくれた服はどれもやぼったくてあまり好きではありませんでしたが、贅沢は言えません。

ウエストゴムの足首まである茶色いスカートと、なにかのロゴの入ったスウェットに着替えると、卵焼きの匂いが染みついていることに気が付きました。

悟志のお母さんはこの服を着てキッチンに立つこともあったんでしょう。
悟志は自分の服を着ているからなんの違和感もなくて、ずるいなと感じました。

それからふたりで家を出て絵里の家へと向かいました。
学校への連絡は、悟志が私の父親のふりをして、私が悟志の母親のふりをして済ませておきました。

これで学校から家に連絡がいくこともないはずです。

準備万端で絵里の家に到着したとき、まだ玄関前に忌中と書かれた紙が貼られていることに気が付きました。

それを見た瞬間私の胸がギュウと痛くなりました。
絵里は一番仲がいい友達でしたし、両親とも会ったことがあります。

そんな子が自分と同じ年齢ですでに亡くなってしまったのだと思うと、やるせない気持ちになります。
「チャイム押すぞ」
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