* Snow gift *
 12月23日、午後3時33分。



 アタシの人生は例えるならコーンスープなんだと思う。

 マグカップに入ってるやつじゃなくて、缶の。

「ちょっと! いくらなんでも急すぎるわよ!!」

「そこを何とかお願いします! もう場所の許可とか運営のスタッフも全部そろえてあるんです」

 大好きなはずなのに、みずからが望んで、みずからが選んだはずなのに──どうにも何かがひっかかってるような感覚。

 どうしても最後の最後がすっきりとしない、もどかしさ。

 いつからだろう?

 こんな風に感じるようになったのは……。

「……はぁ。わかったわよぅ。やればいいんでしょ? やれば……」

「あ、ありがとうございます!!」

 あぁそうか。

 目の前で若干涙目になりながら満面の笑みを浮かべるこの人が、アタシのマネージャーになってからかもしれない。



 歌が好きだった。

 誰かが褒めてくれたからとか、忘れられない歌があったとかそういう理由からじゃなくて、ただただ歌うことが好きだった。

 今この道を選んだことに後悔なんて、ない。

 好きな歌を歌うことで生活がしていられるんだから。

 なのに、どうしてだろう。

 このところ仕事が増えるたびに“ゆううつ”になっていく。

 特別身体に疲れが溜まってるわけじゃない。

 そもそも休みはきちんと取れるようにマネージャーが調整してくれてるし。

 でも……。

 そうやって“増えすぎない”ように調整するのって実はそんなに簡単なことじゃない。

 下手をすれば金輪際使ってくれないプロデューサーだっている。

 けれどそうならないようにマネージャーのあの人が、とてもうまく立ち回ってくれているのだ。

 そんな人が頭を下げてまでやってくれという仕事。

 断れるはずがないし断るはずがない。

 でもきっとあの人のことだ、純情可憐なベビーフェイスで花のような笑顔を浮かべつつもすべてが計算づくなんだろうな。

「それにしたって、どうしてこのタイミングでやっちゃうかなぁ……」

 

 


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