桃太郎REMIX
生きるためには、奪うしかなかった。
だから奪った。あいつらから、
たくさん奪った。
でも、あいつらよりはましだ。
角のない、皮膚が赤くも青くもないあいつらは、同じ種族同士で、差別し、争い、奪いあっている。殺しあっている。
なんて醜いのだろう。なんて愚かなのだろう。
だからいいのだ。
あんな汚いやつらからなら、あんな弱いやつらからなら、いくらでも奪っていいのだ。
奪い返された。
ある日、あいつらからの使者が、仲間の犬と猿と雉を連れて、全てを奪い返しに来た。
蹂躙された。
失ってからわかった。
自分たちがあいつらに与えてきた痛みや苦しみが、どれほどのものだったのか。
そして自分たちが、軽蔑していたあいつらと同じだったことに気づいてしまった。
角があることや、皮膚の色がちがうことで、恐れられ、苦しい思いをしてきたのだから、あいつらから奪ってもいいだろうと、罪を正当化していたこと。
あいつらの汚さ、弱さを見下し、差別していたこと。
なんて醜いことをしてきたのか。
これではあいつらと同じだ。
変わらなければ。変わらなければ。
自分たちは変われるはずだ。
変われるはず……
あいつらはどうだろうか?
同じ種族同士の差別や争いを、当たり前のように、何度も何度も、長い間繰り返している。
過ちは、積み重ねた歴史が長いほど、重くなり、変えることが難しくなってくる。
おそらく簡単には変わらないのだろう。
あいつらのことなど知ったことか!
自分たちが生きてゆくだけで精一杯なのだ。
変わらなければいけない。変わらなければいけない。
もし変わることができないのなら
滅びるだけだ。

