狐少年といじめられ少女
エピソード③ 地獄の時間

「あっ、あの…。話って何でしょうか?」

屋上に着くと、さらにビクビクとしながら、五人の顔を見て、私はそう聞いた。

その時、

グイッ。

突然、新条さんが、私の髪の毛を強く引っ張った。

「っ!!いっ、痛いです!!お願い、やめてください…。」

そう懇願するも、

「お前さぁ、何で学校に来ているわけ?いい加減に迷惑だと分かれよ!!」

私を睨みつけながら、新条さんがそう言う。

「そっ、そんな事言われても…。」

私がそう言いかけた時、

ドカッ。

新城さんの取り巻きの一人、谷山さんが、私のお腹をいきなり蹴ってきた。それに続くかのように、遠藤さん、川田さん、内原さんも私のお腹を蹴ってくる。

「あんた!!マキ様に向かって口答えしてんじゃないわよ!!」

「口を開いてんじゃねーよ!!黙れよ!!このブス!!」

「お前の顔を見るだけでイライラするからさぁ、マジで消えろや!!」

「っていうか、誰もお前に学校来てほしいだなんて思ってねーんだよ!!その辺分かれよな、このバカ女!!」

そう言いながら彼女たちは、容赦なく私のお腹、背中を蹴り続け、挙げ句の果てには、私の手と足も踏みつけた。

「じゃあね、ゴミクズ。」

「もう学校に来るなよ!!」

「さっさと死ねよ!!」

「バイバイ。」

そう吐き捨て、私に背を向けると、五人は去って行った。

痛い…。心も体もすごく痛いよ…。

「…ははっ。私なんて、もうどうなってもいいや…。友達なんていないし、家族からも必要とされていない…。学校の先生だって助けてくれないし…。私って、何のために生きているのかなぁ。」

青い空を見上げながら、小さく呟いた。


〜マキSide(さいど)〜

あいつを置いて、あたし達は、屋上を後にする。

「本当、あいつもしぶといですね〜!!『学校へ来るな』って言っても来るし。」

あたしの取り巻きの一人、谷山がそう言ってため息をつく。

「まっ、いいじゃない。楽しい事出来るし。あいつは、マキ様や私たちのオモチャよ。オモチャがいないと、学校なんてクソつまらないわ。」

「マキ様、これからもとことんあいつを追い詰めましょうね。」

「私、他にどんなことをしたら面白いのか、考えておきます!!」


残りの取り巻き、遠藤、川田、内原の三人が口々にそう言う。

「…そうね。それよりも、早く教室に戻るわよ。授業が始まっちゃうわ。」

あたしがそう言うと、

「「「「はいっ!!」」」」

四人はそう返事をした。その時、


キーンコーンカーンコーン。

一時間目の授業が始まる鐘が鳴る。あたし達は廊下を走り、教室の前まで来ると、

ガララッ。

教室のドアを開けた。

「そこの五人!!何をしている!!もう授業は始まっているぞ!!」

物理教師の橋本先生が、あたし達に向かってそう一喝する。

ちっ、うるさいわね!!クビにしてやろうかしら?

一瞬、そのような考えが頭をよぎる。しかし、

「すいませーん。遠藤さんがお腹痛いと言い出したので、心配で一緒にトイレへ行っていました。」

あたしがそう言うと、

「そっ、そうなんです。でも、今は大丈夫です!!」

遠藤は慌ててあたしの口合わせに乗る。

「そっ、そうか。それなら仕方ないな。さすが新条。学校一の優等生だな。」

感心したように、橋本先生がそう言う。そして、

「早く席に着きなさい。」

と言って、黒板の方を向いた。

「はーい。」

先生の言葉に、いい子の返事をする。

ふんっ。バカ教師が!!こんなにあっさりと信じちゃって本当にバカじゃないの?

まぁ、この学校には、あたしの家がたくさん寄付しているわけだし?いくら教師でも、あたしには逆らえないわよね…。

あたしは、小さくほくそ笑んだ。
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