君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
車はいつもの病院に到着する。
私も通っている病院だ。
あーあ、中には行きたくないなあと思いつつも、陽菜のことを放っておくことはどうしてもできなくて、一緒に診察室まで入る。

「東条先生、陽菜を連れてきました」

「陽菜ちゃん、大丈夫?」

診察される不安そうな陽菜の手を私はずっと握ってた。
はる兄と東条先生は難しいことを沢山話してる。
すぐもくもくとした煙みたいなのを吸って、注射も我慢して、陽菜はやっと喋れるようになった。

「あり……がとね」

「いいって。でも明日アイス奢りね」

「ふふっ分かった。ハーゲンダッツでもいいよ」

「やった」

2人だけで交わされるひみつの約束。
きっとハーゲンにしても、半分は陽菜に取られちゃうんだけどね。

「そうだ、たしか君はさゆちゃんだったよね?」

さゆの担当医の東条先生が急に声をかけてくるから、正直びっくりした。私のことはほとんど知らないはずなのに。

「は、はい」

「俺の弟、アキが君のこと心配してたよ。ずっと検診に来てないって」

「……だってもう行かないから。この間アキ先生にもそう伝えたよ」

「はぁ……」

東条先生は苦笑いしながらため息をついた。
アキ先生のお兄さんだったなんて。
似てなさすぎて、気付くはずないし。

「昔から診てもらってたらアキの口の悪さはもう分かってるだろ? 本心からじゃない。あぁいう奴なんだ」

「でももういいの」

「何言ってんの、今からPHSであいつ呼ぶよ?」

「やめて!!」

私は東条先生のPHSを奪い取って投げた。
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