君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
バーガー屋さんは私たちみたいな学生や、お仕事してる人で混雑していた。だからこそ、私たちが多少変な話をしてたって誰も気にとめない。

アップルパイを買って、席に座る。
奏はポテトのLとコーラ。

「それだけでいいのか?」

「うん。夜ご飯も食べるから」

「ほんとか? 最近おばさんあんまり帰ってきてないだろ。ちゃんと自分で作ってるか」

「うん。お母さん大きい案件いくつも抱えてるみたい。泊りがけが増えてきたよ。ご飯はね、たまには手をこんだのを作ってる」

「たまにじゃダメだろ。うちだったら母さんの作った飯をいくらでも食べていいしさ。この間の話、真剣に考えてくれた?」

私は俯いてしまう。
たくさんたくさん考えた。

アキが未来からやってきて、そこでは私がアキの奥さんだったことも。そして、今の私の心もきっともうずっと昔からアキだけに向いてることも。

「ずるいよ……」

それでも、変わらなかった。
この気持ちだけは変えられなかった。
奏がくれる優しさが、欲しくて欲しくてたまらない。

「ずるくていい。俺はさゆと一緒にいたい。できるだけ近くで過ごしていたい」

だってこの人は報われなくても、与え続けてくれる人だと知ってしまったから。

「うん。私も奏がそばにいたら嬉しい。居てくれるだけで幸せな気持ちになる。だからーーいいの?」

「うん。うちにおいで、さゆ」

アップルパイはあったかくて甘酸っぱい。
こういうのに名前をつけるなら、初恋っていうのかな。
私はこの甘さに溶けていく。
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