婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語
この瞬間、ふと頭をよぎったのは『九条不動産』の文字だった。


直接の系列じゃなくても、あれだけ巨大な九条不動産が本気を出せば、こんな圧力くらい朝飯前だろう。ついに私は、あの大家族を敵に回してしまったのか?


確証はない。けれど、無視できない予感だけがじわじわと胸を締めつける。

 
「……九条不動産?」


思わず口に出してしまったその言葉に、紫道の友人はどこか申し訳なさそうに、ゆっくりと首を横に振った。


違うという意味なのだろう。でも、それ以上は何も語らない。……そう、その顔は『これ以上は言えない』と訴えていた。


──ってことは……他の王子?

 
これまで、あくまで憶測でしかなかったものが、ここで明確な形を持ちはじめた。

 
誰かが、意図的に、私に新しい住居を見つけさせないように動いている。


しかも、かなり大きな力で。

 
私が知る限り、それができる人間は限られている。


慶智の王子たち--彼らしかいない。

 
……誰?


まさか全員じゃないよね? でも、個人でもこれだけのことを仕掛けるなんて。

 
男女の別れだけで、ここまでされるって何なの?





だって私は知っている。これまでの彼らの裏の顔を。


Cool Beautyだって、狙われたら潰されるのは時間の問題かもしれない。


だったら潰される前に、こちらから終わらせた方がいい?

 
でも、それじゃあ葉子を巻き込むことになる。


私さえいなくなれば、Cool Beautyは守られる?


いっそ日本を出た方がいいのかもしれない……。

 
思考が頭を埋めつくしていく。再び、アメリカ行きが現実味を帯びてくる。

 
焦っている私に、紫道がぽつりと告げた。


「圭衣。もう少し、待って」

 
どういう意味? 
また別の不動産屋を紹介してくれるつもりなの?

 
わからない。でも、紫道のあの目は私を思っての言葉だった。


それだけは信じられた。





アメリカに行くにしても、今進行中のコラボ企画と、ウィルとラーラのウェディング衣装だけは、日本でちゃんと終わらせておかないと。


もし、コラボがこの先も継続されるなら、ネットでのミーティング以外はもう無理になるだろう。

 
キリのいいところで、動く。


それまでは、私がやるべきことを、ただ淡々と。
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