婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語
無視されたのが気に入らなかったのか、あの女はついにお客様にまで暴言を吐きはじめた。


「こんなのを好むようじゃ、あなたたちも情けないわね! やっぱりアイビールックを着ていないと、頭の悪さが目立つわ」


はあ? 何なの、この人。自分のその態度で、仲間まで冷たい目で見られてるって、まったく気づいてないわけ?


しかも、ILPクラブの名前にまで泥を塗ってる。止めもしない周りの男たちもどうかしてる。ロクでもない。


私はスマホを手に取り、こっそりとセキュリティーへ連絡を入れた。


再び視線をあの一団へと戻して。そして、私は、見てはいけないものを見てしまった。
いや、正確には『見てしまった』のではなく、『気づいてしまった』。


女の隣に立つ、ひとりの男性。その人が着ている薄紫のカラーシャツと、水玉模様のネクタイ。チノパンに、ネイビーブルーのブレザー。それは、私がクリスマスにプレゼントしたコーディネートだった。



昨日、後ろ姿で見かけたピンクのカラーシャツも、間違いなく私の作品。ということは、あの時の人影も--


やっぱり、大和だったんだ。


なんで? 
どうして彼が、あんな人たちと一緒にいるの? 
それも、よりによってパステルピーターズを見下すような女と。


胸の奥からじわじわと怒りがこみ上げてきた。思わず、椅子から勢いよく立ち上がる。

けれど、ふと我に返った。


ま、待て。私、バレるかもしれない?
いやいや、今日は完璧に変装してるし。
ピンクのウィッグにマスク、ワンピースも定番のアリススタイル。
それに、私の身長は目立つけど、リリーちゃんたちも高めだから紛れて見えるはず。


とにかく、落ち着こう。


私は裾上げを終えたワンピースを手に取って、待っているお客様を試着室へと案内する。その間も、あの女とその仲間たちの様子を横目で見守り続けた。


幸い、商品に被害は出ていないようだ。けれど、あの女の口はまだ閉じない。仲間に止められる様子もなく、むしろそれすら楽しんでいるようにさえ見えた。


ただのかまってちゃんなの? こんな人を放置しているILPクラブも、やっぱり最低。しかも、その中に大和がいるだなんて。


もやもやした気持ちが、胸にずっしりとのしかかる。


その時、やっとセキュリティーが到着した。


男たちに何か声をかけている。しばらくして、あの一団はセキュリティールームへと連れていかれることになったらしい。


私は彼らの後ろ姿を目で追いながら、なんとも言えない感情に包まれていた。胸の奥がザラザラして、言葉にならない想いが喉の奥でくすぶっていた。
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