婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語
「はぁ? 今ここでその話?」


思わず語気が強くなったのは、自分でもわかっていた。


でも、それどころじゃなかった。胸の奥に渦巻くモヤモヤを抱えたまま、婚約だの結婚だのという話をするなんて、正直、無理があった。


まずは、大和への不信感をどうにかしなければ。


ずっと考えていた。あの秘密を、どうやって打ち明けるか。三つの秘密のうち、どれをどう順番に伝えるべきか。そんなことで頭がいっぱいだったのに。


なのに、またひとつ、厄介な問題が増えてしまった。


「圭衣ちゃん。もしかして、他に好きな人ができたの?」


ふいにかけられた大和の弱々しい声に、私は目を見開いた。


「へぇ? いきなりどうしたのよ?」

「なんで、僕との婚約をまだ先延ばしにしてるのか、わからなくてさ。唯一考えられるのが、圭衣ちゃんが僕のことをもう好きじゃなくなって、他に誰かいるんじゃないかって」


その言葉は、胸にちくりと刺さった。どうしてそんなふうに思わせてしまったんだろう。


「それはないよ、絶対に。ごめんね。先延ばしにしてるのは、他に誰かいるからじゃないの。ただ、今、会社のことでいっぱいいっぱいになっちゃって」

「そうだよね。葉子ちゃんのことも、あったしね」


申し訳なさそうに笑う彼の声が、妙に寂しげに響いた。


「本当にごめん。もう少しだけ、時間をちょうだい」


うつむき加減にうなずいた大和の横顔が、やけに切なく見えた。


胸がギュッと締めつけられる。


気づけば私は、ソファに座る彼の背中に腕を回していた。そして、そっと抱きしめる。


さっきまでの苛立ちが、嘘みたいに消えていく。


でも、その優しさが、かえって苦しかった。


大和のこと、探ってるなんて。


罪悪感が、じわりと胸に広がっていく。


大和のこんな顔、見たくなかった。あんなに明るくて、強くて、なんでも受け止めてくれるような人なのに。こんなふうに弱いところを見せる彼なんて、初めてだった。


でも、彼をこんなふうにさせてるのは、私なんだ。


「ごめんね、大和」


心の中で、そっとつぶやく。


ねえ、大和──
今ここにいる、あなたと週末、あの場所で見かけたあなた。


どっちが、本当のあなたなの?


私はまだ、答えを知らない。
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