婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語
箱を抱え、リビングへと戻る。床にその箱を放り、洗面所とキッチンからも彼の物を集め、箱に投げ入れた。バッグから彼のマンションキーを取り出し彼へ差し出す。少し手が震えていた。そして事務的に彼へ告げる。いつもより低い声で。


「これで全てだと思う。あなたの所にある私の私物は、捨ててくれて構わない。この部屋の鍵だけ返してくれれば」



「け、圭衣ちゃん、お願いだから僕の話を」


大和の悲痛な声を遮るように声を荒げた。


「今さら話すことはないから。あなたがそうしたの。私の鍵をこのテーブルに置いて、早く出て行って」


彼に再び言い訳する機会も与えず、とっとと仕事部屋へ向かい、ドアを乱暴に閉めた。内側から鍵をかけて、そのままもたれかかった。


言いたいことは言った。もう、終わり。


なのに、胸の奥がざわつく。ぐらりと足元が揺らいで、気づけば私はその場にしゃがみ込んでいた。


「……もう知らない」


吐き捨てるように言った声が、妙にかすれて聞こえた。


泣くなんて、絶対にしたくなかった。あいつの前でなんて、もっとイヤだったのに。


なのになぜ、こんなにも苦しいんだろう。


「私は間違ってない。私は、間違ってないよね……?」


繰り返せば繰り返すほど、胸がぎゅうっと締めつけられていく。涙が、ぽたりぽたりと床を濡らしていくのを止められない。


声を殺すのが精一杯だった。泣いていることを、絶対に知られたくなくて。


でも心の奥底で、誰よりも--
『行かないで』って、叫んでる自分がいる。
< 57 / 151 >

この作品をシェア

pagetop