婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語
再び商店街を抜けて、大通りのバス停でバスを待つ。いつもの帰り道。でも今日は、ちょっとだけ寄り道。


マンションに直行するはずだったのに、あの一言が引っかかって。実家を出る間際、父さまがぽろっと言ったこと。



『大和君、悠士君と烏丸家のご両親にお礼を言いなさい。彼らは君を守ってくれたからね』


……は? 何それ。


『守ってくれた』って、何から? 
どうして? 
そのあたり、まるっと説明なし。
聞きゃあよかったんだろうけど、正直、あの空気に耐えられなかった。


何を知ってるのかは、父さま、大和、烏丸家の面々--で、知らされてないのが、ど真ん中にいたはずの私?

 
冗談じゃないよ。

 
自分のことなのに、蚊帳の外。
アラサー目前の女が、自分の話をあとから聞かされるってどういう了見?


腹立つったらありゃしない。
誰にって、父さま、大和、烏丸家全員、だ。

 
誰が仕切ったのか知らないけどさ、こっちを部外者扱いした時点で、そりゃあもう……お察しってもんよ。


おかげで胸がざわざわして、落ち着かない。
で、気づいたら足が勝手に、おじいちゃまのところへ向いてた。

 



バスが停まり、降りて隣町の商店街の花屋で花を買う。それから、またバス停の方へ引き返す。


地下鉄の駅の裏手。その奥には、いつものお寺。おじいちゃまが眠る場所。

 
このお寺は、江戸の昔、遊郭の遊女たちを弔った投げ込み寺。そういう縁のある、ちょっと物悲しくて、でも誠実な場所。

 
本堂の裏手に、おじいちゃまのお墓がある。
雑草を抜いて、落ち葉を払って、買ってきた花を供えた。寺務所で手に入れた線香に火をつけ、静かに手を合わせる。

 
ここだけは、日光街道や明治通りの喧騒も届かない。しんとした空気が、心に沁みる。


おじいちゃま。
また、愚痴をこぼしに来ちゃったよ。



< 71 / 151 >

この作品をシェア

pagetop