婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語
いつからだろう。仮の姿で生きるようになったのは。


本当は、私は甘えん坊で、可愛いものが大好きで。人にぎゅっとしてほしくて、甘えたい気持ちをいつも胸の奥に隠していた。


なのに、甘え方を知らなくなっていた。
いや……正しくは、『甘えることを許されなかった』のかもしれない。


そうして私は、物分かりが良く、頼りがいのある『お姉ちゃま』になった。正義感が強くて、少し短気で。でも、家族を守るために強くあろうとした。


両親がもっと私を見てくれるように。
不在がちな父さまの代わりに、妹たちを支えられるように。そう信じて、いつも『いい子』でいようとしていた。


……その始まりは、
あの日--


母さまと父さまが、涙を流す姿を初めて見てしまった日からだったのかもしれない。





私の家族は、友達の家とは少し違っていた。


父さまはドイツ系のアメリカ人。母さまは東京の下町育ち、ちゃきちゃきの江戸っ子。


今でこそハーフであることは珍しくないけれど、私たちはHope Medical JapanのCEOとして父さまが任命されるまで、日本とアメリカ、時にはヨーロッパを数年ごとに行き来していた。

 
下町で診療所を営んでいた母方の祖父、そして近所の人たちに囲まれて育った私は、どちらかというと母さま似だと思う。


ちなみに、父方の祖父母は私が物心つく前にすでに他界していた。

 
3歳のころにはすでに、私はピンクやレースのついた可愛い服が大好きだった。私自身も、お人形も、ふわふわのドレスを着せてもらって、写真に映る私はいつも笑顔だった。


でも--
その笑顔の裏に、もう『気づいていた』。


母さまと父さまの泣き顔を、こっそり見てしまったのも、たしかその頃。

 
あとで知った。


あの日、母さまは流産し、『もう妊娠は難しいだろう』と医師に言われたのだと。


たとえ3歳でも、子どもはちゃんと察している。


2人の間に漂う空気、表情の奥にある沈黙。私はいい子でいれば、きっとまた笑ってくれると思っていた。


だから私は、甘えることをやめたのだ。

 
その時から少しずつ、『本当の私』は、仮面の奥に隠れていった。
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