Music of Frontier
さて、そんなことがありながらも、握手会は無事に終わった。




「ふぃ~。終わった~♪」

「たくさん人が来てくれて良かったな」

「全くだ」

聞くところによると、用意していた写真集は、あっという間に売り切れてしまったそうだ。

皆、どうもありがとうございます。

「握手するだけなのに、結構疲れちゃうね」

「ベーシュさんは人数多かったですからねー」

「ルトリアほどじゃないよ」

でも俺はほら。

間違えた人も大勢混じってたはずだから。ノーカンノーカン。

「おかしな人はいませんでしたか?」

俺やルクシーは男だから良いが。

ベーシュさんは女の子。従って、握手会に来るファンの大半が男性。

よくあるじゃないか。アイドルの握手会で、良からぬことを考える熱狂的なファン。

そういう人に遭遇してなければ良いのだが。

「おかしな人…?おかしな人かは分からないけど、一人に変なことを聞かれたよ」

「…変なこと?」

…まさか。

「ブラジャーの色は?」とか?「彼氏いるのグヘヘ」とか?

今すぐ追いかけて取っ捕まえろ。

「だ、大丈夫だったんですか?何を聞かれたんです?」

「うん。『仮面つけてみないか?』って聞かれた」

「…仮面…?」

何それ?

何かの隠喩?

「その人自身も仮面つけてた。似合ってたけど」

「…どういう意味だったんでしょう。ベーシュさん、何て答えたんですか?」

「普通に、結構です、って言った。…あの人の仮面、ちょっと派手だったから」

派手じゃなかったらつけるの?え?

しかし…仮面つけてみないか、って…どういう意味だったんだろうな…?

何かこう…性的な意図があったのだろうか…?

まさか、言葉通りの意味ではあるまい。

「よく分かんないですけど…。気を付けた方が良いですね」

「そうかな」

「そうですよ」

今時の世の中って、怖いからね。

何企んでるか分かんない人が多いよ。

俺の列に並んでた…あのエロい人しかり。

結局あの人…何だったんだろうな…?
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