佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
「いや、別に。」



「こんなにボロボロなプレーをして”別に"はねーだろ。 
今回は珍しく3ヶ月くらい続いてたらしいからな、彼女も人気のある結構可愛い子だったし。
俺、先週の水曜日の夜にお前の彼女が他の男と良い感じで歩いてるのを目撃したんだよ。
辛いか〜、辛いよな〜、しんどすぎてシュートもパスもミスりまくるよな〜?」



顔は見えないけれど、絶対に楽しそうに笑っている土屋先生が佐藤先輩にそう言うと・・・



「いや、別に。」



「反抗期中の家での男子かよ。」



土屋先生が小さく笑った後、静かな声で言った。



「彼女と別れたくらいでシュートもパスもミスりまくるとか、青春だな。」



それには佐藤先輩がすぐに答えた。



「いや、これは彼女は一切関係ないやつ。」



「強がるなって。
俺に言いたくねーのは分かるけど、お前には結構良いチームメイトがいるんだから、そいつらに話し聞いて貰ったりしろよ?」



「いや、でもマジで彼女は関係ないし。」



「・・・・じゃあ、何だよ、言ってみろよ。」



土屋先生が聞くと佐藤先輩は黙って・・・。



しばらく、黙って・・・・。



「しんどすぎて、言葉に出せない・・・。
大人になるのがすげー怖い・・・明日になるのも死ぬほど怖いし、この練習試合が昼に終わるのもどうしようもなく怖い・・・。」



「・・・・・・・・。」



開いた足の間に大きく項垂れた佐藤先輩を見て、土屋先生が言った。



「家で何かあったか?」



「・・・・・・・・。」



「そういえばお前、妹のハムスター・・・ペーだっけ?
ペーが死んだ時もしばらく元気はなかったよな。」



「ピー・・・。
中学の時にさ・・・、一緒に選んだんだ・・・。
俺・・・晶と一緒にさ・・・ピーを選んだんだ・・・。
プーのことも、一緒に選んだ・・・。」



「ああ、プーが死んだんだな・・・。」



「いや、プーはまだ生きてるし。
勝手にプーのことを殺すなし。」



「今の流れ、完全に死んでただろ!!」



「プーは元気に生きてるけど、俺が死にそう・・・。
いや、死にたい・・・。
俺、今日の午前中に死にたい・・・。」



「いや、マジでどうした・・・。」



「晶がさ・・・・・」



そこで私の名前が出てきたことには少し驚く・・・。



「ピーを選ぶ時、すげー可愛かった・・・。」



「そうか・・・。」



「プーを選んでる時はもっと可愛かった・・・。」



「そうか・・・。」



「出会った時から晶は可愛かったけど、どんどん女の子っぽくなっていった・・・。」



「そうか・・・。」



「そのどんどん可愛くなっていく所も可愛いなと思ってた・・・。」



「そうだな・・・。」



「でもさ、もう・・・無理、しんどい・・・死にたい・・・。」



「急に何でそこにいったんだよ!?
話しを途中ですっ飛ばすなよ!!」



土屋先生が佐藤先輩の背中をバンッと叩くと、佐藤先輩は持っていたタオルで顔を覆った。



そして・・・



「晶に男が出来る所なんて見るくらいなら・・・っこのまま死にたい・・・っ。」



そう言った。
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