佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
「ダメじゃん、晶・・・。
全然ダメじゃん・・・・。
全然、ダメだよ・・・・何で、そんな・・・・っ」



「ごめんなさい・・・っ、でも・・・慎也に言いたくて・・・・・っ」



「言ったらダメだったよ・・・。
絶対、ダメだったよ・・・。」



佐藤先輩の手から落ちたバスケットボールが地面に跳ねていく。
その音が悲しく響いていく中、佐藤先輩が私のことを抱き締めた。



強く強く、痛いくらいに抱き締めてきて・・・



「嫌だ・・・・っ嫌だ、離さなければ良かった・・・!!
離さなければ良かった・・・・っっっっ!!!」



佐藤先輩の叫びが高速道路の下に響き、私はもっと泣いた。



「ごめんなさい・・・っ、話して、ごめんなさい・・・っ。」



「晶のせいじゃないよ・・・。
俺のせい・・・、全部俺のせいだよ・・・。」



「佐藤先輩は何も悪くないです・・・。
私が悪いんです・・・。」



「晶は何も悪くないよ・・・。
俺が全部悪いから・・・。」



「私が全部悪いです・・・。
佐藤先輩と、エッチ・・・したことを、慎也に・・・言いたいと思っちゃって、私が・・・全部・・・悪い・・・。」



「・・・・・・。」



「慎也、ショックだって・・・。」



「・・・・・・・・。」



「おちんちんまで入ってたし、それで慎也・・・強い衝撃を・・・。」



佐藤先輩の胸で泣きながらそう言うと、佐藤先輩の腕の力が少しだけ抜け・・・



私の頭を優しく撫でた。



「もう、ダメだよ晶。
そんな話までしちゃったら絶対にショックを受けちゃうもん。
でも話しちゃったなら仕方ないよ。
そっか、動物園の入口でその話しをしたんだね?」



「はい・・・勝手に、ごめんなさい・・・。
慎也ならきっと大丈夫だと思って・・・勝手に言っちゃいました・・・。」



「俺は全然大丈夫だよ、でも晶が可哀想なことになってるのはめちゃくちゃ心配。」



「はい・・・、だって、慎也なら大丈夫だと思って・・・、慎也なら・・・っ話しを聞いてくれると、思って・・・。」



「うん、晶の気持ちも分かるけど、柏木って他人だからね。
晶への気持ちなんてその程度の男だったんだよ。」



「・・・・・・でも、ショックとか・・・衝撃とか、そういう言葉を使ってくれました。
今まで"お兄ちゃん”と"妹”だと思ってたからって・・・。」



私がそう言った時、女バスのジャージに入れているスマホが震えた。



佐藤先輩の腕の中でそのスマホを確認すると・・・



「お母さん?」



「慎也・・・。」



慎也からのメッセージだった。



「柏木なんてもう無視で良いよ。」



「でも・・・、でも、まだ動物園にいるって・・・。
さっきは俺に話してくれてありがとうって・・・。
頑張って話してくれたのにあんなことを言って・・・ごめんって・・・。」



凄く凄くホッとして、さっきとは違う涙を流しながらスマホを握り締めた。



「まだ動物園にいるから、今からまた来られる?って・・・。
晶の話しをもう1度ちゃんとよく聞くよって・・・。」



泣きながら顔を上げ、佐藤先輩に笑い掛ける。



「よかったぁぁぁ!!!
今からまた動物園に行ってきます!!!」



そう言って佐藤先輩の腕の中から出た。



いや、出ようとしたのに、佐藤先輩が私の身体をもっと閉じ込めてきた。



そして・・・



「もう離さないよ・・・。
行かせるわけないじゃん・・・。」



さっきよりも痛いくらい強く、抱き締めてきた。
< 77 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop